KADOKAWA Technology Review
×
ゲイツが推進する遺伝子ドライブ、環境団体が国連で「禁止」訴え
Tom Ervin | Getty Images
ニュース Insider Online限定
United Nations considers a test ban on evolution-warping gene drives

ゲイツが推進する遺伝子ドライブ、環境団体が国連で「禁止」訴え

生物のDNAを組み替えて、繁殖時に特定の遺伝子を拡散させる「遺伝子ドライブ」を巡って、マラリア蚊撲滅を目指すビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団などから資金提供を受けている研究者たちと、環境保護団体との間で対立が高まっている。環境保護団体は国連の場でフィールドテストを世界的に禁止するように求めていく考えだ。 by Antonio Regalado2018.11.19

マラリアの根絶を願う億万長者のビル・ゲイツは、マラリアを媒介する蚊を絶滅できる可能性がある遺伝子ドライブ技術に「精力的に」取り組んでいる。

ゲイツは遺伝子ドライブを「飛躍的な進歩」と呼んでいるが、遺伝子ドライブはリスクが大き過ぎて絶対に使用すべきではないと訴える環境団体もある。

いま、両者の対決は山場を迎えている。

11月13日に出回った書簡において、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団などから資金提供を受けている科学者たちが警告を発している。国連が11月17日から22日にかけてエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催する生物多様性に関する会合に乗じて、遺伝子ドライブのフィールドテストの世界的な禁止を促す動きがあるというのだ。

問題となっているのは、国連の生物多様性条約の改定を手がけている外交官が作成した草案だ。この草案が採択されれば、たとえ実験の一環であったとしても、人為的に操作された遺伝子ドライブが含まれる生命体を自然界に解き放つことを「控える」ように各国政府に求めることになる。

遺伝子ドライブの世界的な一時禁止を求める提案を推進しているのは、遺伝子改変された大豆やトウモロコシにも反対している環境団体だ。これらの団体は遺伝子ドライブの技術を原子爆弾になぞらえている。

これに対し、シアトルに拠点を置くゲイツ財団は対抗キャンペーンに出資している。広告代理店に依頼して遺伝子ドライブ禁止法案の先手を打ち、11月13日に書簡を配布した。書簡に署名している人物の多くは、財団から直接資金提供を受けている。

「率直に言って、両者によるロビー合戦ですね」と言うのは、ノースカロライナ州立大学で遺伝子ドライブの指針について研究しているトッド・クイケン博士だ。クイケン博士自身もゲイツの書簡に署名するよう依頼されたが、国連の技術アドバイザーという立場上断ったという。

新しい技術

遺伝子ドライブ技術では蚊のDNAを組み換え、繁殖時に特定の遺伝子改変を拡散させる。生存に逆効果となる遺伝子だ。

今年、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)の研究チームが研究室の環境で蚊の集団の根絶が可能なことを示した。自然環境に解 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る