メタの元CTOはなぜ、
気候投資家に転じたのか?
メタでCTO(最高技術責任者)を務めていたマイク・シュローファーは、なぜ投資家へと転身したのか。気候テック企業を支援することで、何を目指しているのか。MITテクノロジーレビューに語った。 by James Temple2024.08.06
- この記事の3つのポイント
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- 元メタCTOのマイク・シュローファーは気候変動問題に取り組んでいる
- 海洋アルカリ性の向上や太陽地球工学など幅広い分野の研究を支援
- 気候テック企業への投資を通じて低炭素経済への移行を後押しする
2020年の初めにパンデミックで都市が封鎖されたとき、当時メタの最高技術責任者(CTO)だったマイク・シュローファーは、これまでのキャリアのなかで最も自由な時間があることに気づいた。
本来は出張やソーシャルイベント、子どもの学校行事で埋まっていたはずであった静かな時間の中で、彼は人類が深刻な危機に直面しても、いかに上手く団結して公衆衛生対策を実施し、検査キットを大量生産し、ワクチン開発を加速できるかについて思いを巡らせていた。
その一方で、この経験によって、気候変動のような、リスクが深刻で増大しているものの、おおむね遠い将来に迫ってくる、ゆっくりと進行する大惨事への対応が、人類は特に苦手だという思いを強くした。
地球温暖化について学ぶにつれ、シュローファーは自分にも果たすべき役割があると考えるようになった。それは、自分の技術的専門知識と資金力を活用することで、必要不可欠な研究を加速させ、深刻化する危険の回避、備えのために必要な理解やツールを社会が開発する手助けをするというものであった。
気候変動の脅威により多くの時間を費やすようになったシュローファーは、メタのCTOの職を退き、この問題への慈善活動と営利活動の両方を通じた取り組みに専念することを2021年に決めた(なお、同氏は現在もメタの上級フェローを務めている)。
2023年5月、シュローファーは、核融合の商業化、埋め立てによるガス排出の削減、畜牛によるメタン汚染の削減などに取り組むスタートアップ企業に加えて、初期段階の気候テック企業を支援するベンチャーファンド「ギガスケール・キャピタル(Gigascale Capital)」の創業を発表した。さらに同年夏には、非営利活動の「カーボン・トゥ・シー(Carbon to Sea)」を立ち上げた。これは、カンラン石、玄武岩、石灰といった物質を添加することで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素をより多く海洋に取り込もうとする「海洋アルカリ性の向上(OAE)」に関する研究を加速させることを目的とした、5000万ドル規模の取り組みである。
今年、MITテクノロジーレビューが最初に報じたように、同氏はアウトライヤー・プロジェクト(Outlier Projects)を立ち上げ、大気中の温室効果ガスの除去、氷河の崩壊防止、太陽地球工学という物議を醸すアイデアの探求という3つの分野で研究に取り組むグループに助成金を寄付している。太陽地球工学とは、より多くの熱を宇宙に放出することで、地球を冷却する可能性を模索するさまざまな方法の総称である。
シュローファーは先日、カリフォルニア州パロアルトのダウンタウンにあるギガスケール・キャピタルのオフィスでMIT テクノロジーレビューのインタビューに応じ、気候変動問題に対する彼のアプローチや論争の的となる気候変動への介入に資金を投じる理由、さらには人工知能(AI)と大統領選挙がクリーン・エネルギーの進展に与える影響について話してくれた。
なお、以下のインタビューは、発言の趣旨を明確にし、長さを調整するため、編集されている。
◆
——気候変動問題への取り組みに共通する哲学はありますか?
根底にあるのは、一群の人々を集め、全員が同じ方向を向き、彼らが毎朝起きたときに「この問題を解決するために行動する。他のことは気にしない」と言えば、往々にして驚くようなことが成し遂げられるということです。
もうひとつの共通のテーマは、私のキャリアについても言えることですが、テクノロジーは私の知る限り、制約を取り除くことができる唯一のものということです。
コストを削減し、効率を上げ、新しいテクノロジーを開発し、以前は困難な制約であったものが取り除かれるのをメタで何度も見てきました。
テクノロジーを適切に開発・展開することで、私たちは二者択一を排除し、「イエス・アンド・ディシジョン」という望ましい世界に移行できます。
どうすれば80億人の生活水準を欧米並みにし、皆さんの子どもたちが住める地球を手に入れることができるでしょうか? それがまさに問題であり、私が考える唯一の答えはテクノロジーなのです。
——海洋による二酸化炭素除去には、それほど上手くいっていないように思えるコンブの海中投下から、海洋鉄肥沃化などまで、さまざまなアプローチの可能性があります。なぜ海洋アルカリ性の向上なのでしょうか? なぜ、深く掘り下げようと思ったのでしょうか?
さまざまなアプローチについて読んでいくと、それが最も可能性が高く、最も拡張性があり、最も費用対効果が高く、最も永続的でありながら、最もよく理解されていない方法として際立っていました。
ですから、もし上手くいけばたいへんなインパクトがあるのですが、もっと知る必要がありました。
海洋アルカリ性の向上に対するバイアスはありませんでした。コンブを使ったアイデアも気に入っています。これらすべての方法を気に入っています。私はひとつの解決策にこだわる人間ではありません。できるだけ多くのことが上手くいってほしいのです。
私はエンジニアとして、比較的エレガントでシンプルなソリューションが、技術展開において最終的には拡張性のあるものになると考えています。そして、OAEはまさにシンプルです。
——それでは、ちょっとデリケートな太陽地球工学の話を伺いましょう。なぜ、これが研究を支援したいと思う重要な分野だと考えたのでしょうか?
私たちは、インパクトが大きく、科学的不確実性が高いと定義される問題を幅広く調査しました。それらは、私たちが満足できて、かつ得意とすることに一致すると思える問題です。そして、調査の結果、二酸化炭素除去のほかに出てきたのが、太陽放射管理(SRM)と氷河の安定化でした。
SRMは、もし気候変動によって人道的危機に陥った場合に、必要に応じて急速な冷却を可能にする方法であるため、単刀直入なソリューションと思えました。
暑さによってすでに …
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