気候テック10:低炭素セメントに重要鉱物も、二刀流のブリムストーン
米国のスタートアップであるブリムストーンは、セメント製造の排出を約60%削減する技術を武器に、重要鉱物の国内生産も担おうとしている。 by James Temple2026.10.14
- この記事の3つのポイント
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- ブリムストーンは同一岩石からセメント減炭素と鋼鉄・チタン等重要鉱物を同時生産する技術を発表
- バイデン政権下では排出削減を、トランプ政権下では国内重要鉱物生産を訴求し政治情勢に応じ戦略を転換
- 商業規模未達成で助成金撤回もあり、2028年稼働予定のリノ工場後も本格展開は2030年代以降の見込み
ブリムストーン(Brimstone)は、セメントによる二酸化炭素排出量の削減と、米国内でより多くの重要鉱物を生産する手段の提供という、2つの産業課題で前進を遂げつつある。同じ岩石を用いて同じ工場で両方を実現できれば、建材やアルミニウム、鋼鉄などの製造において、よりクリーンで効率的なプロセスが開かれることになる。
ブリムストーンは、この政治的分断の時代にふさわしい「使い分け」のうまい気候テック企業だ。グリーンセメント企業であると同時に重要鉱物生産企業でもあるこの米国拠点のスタートアップは、どちらの政党が政権を握ろうとも勢いを維持できる立場にある。
気候変動対策により重点を置いていたバイデン政権下では、同社の主な売り文句は、温室効果ガス排出量を約60%削減しながらセメントを製造できる能力だった。これは、加熱時に二酸化炭素を放出する標準的な石灰石の代わりにケイ酸塩岩石に切り替えることで実現している。コンクリートの製造に使われる結合材であるセメントの従来の製造プロセスは、世界の二酸化炭素汚染の約8%を占めている。
しかし、保護主義的で気候変動を否定するトランプ政権下では、同社は現在、同じケイ酸塩岩石から他の貴重な素材を抽出できるという、自社プロセスの副次的な利点を強調している。
ブリムストーンは何年も前から、自社のプロセスによってセメントを強化するために使える材料も生成できると述べてきた。しかし2025年初頭、同社は、製錬グレードのアルミナ(アルミニウムの原料)も生産できるようになると強調した。
その後、同社は2025年末に、もう1つの切り札を明らかにした。それは、単一の精製施設で同じ岩石から鋼鉄、マグネシウム、チタン、その他の重要鉱物を製造できるという能力だ。
同社の最高経営責任者(CEO)であるコディ・フィンケによると、これらの素材の世界市場は2兆4000億ドル規模に上るという。ブリムストーンのアプローチは、現在主に中国で生産されている製品について国内での生産経路を提供することを約束するものであり、中国はトランプ政権の最も厳しい貿易政策とレトリックの対象となっている。
主要指標
- 業界:重工業
- 設立:2019年
- 本社:米国カリフォルニア州オークランド
- 注目すべき事実:2023年、同社はポルトランドセメントの製造プロセスについて第三者業界認証を取得し、これにより自社製品が標準的な製造プロジェクトに適格となった。
潜在的インパクト
同社は、これらさまざまな製品を生産できるという新たな能力について非常に大きく喧伝し、自社のプロセスが国家安全保障を強化し、「次世代の産業精製」をもたらすと主張した。基本的な環境面での謳い文句は、同じ岩石と単一の採掘プロセスからこれらすべての素材を生成することで、個別に製造する場合と比べて必要なエネルギーが劇的に少なくなり、発生する廃棄物も大幅に減るというものだ。
「私たちは、実際に産業革命を起こせる、世代を代表する企業の1つであると思います」とフィンケCEOは語る。
これに対しては、「さて、どうなるか見てみよう」と言うほかない。
留意点
ブリムストーンはまだ商業規模での生産を実現しておらず、財務面・技術面で数多くの課題に直面している。一部の観測筋は、同社が単一種類の岩石からこれほど多くの素材を経済的に十分な量だけ抽出できるのか、また、米国で鉱業や鉱物精製を厳しいビジネスにしているコストや労働力の問題を克服できるのか、懐疑的な見方を示している。
ブリムストーンはまた、2025年に大きなつまずきを経験した。トランプ政権が、ネバダ州リノで計画されている次期プラント(商業実証プロジェクト)向けの1億8900万ドルの助成金を取り消したのだ。
フィンケCEOによると、同社は政権とこの資金の復活に向けて実りある対話を続けており、その中でブリムストーンは国内での重要鉱物生産を押し上げる可能性を強調しているという。同CEOは以前、この助成金やその他の補助金がなくても、プラントの開発を進めることができると述べていた。
次のステップ
同社は、セメントと補助的なセメント系材料(混和剤)、アルミナのみを生産するリノの施設を2028年に稼働開始する見込みだ。つまり、ブリムストーンは鋼鉄やチタン、その他の重要素材を供給するための初の本格的な工場について、まだ資金を調達して建設する必要があり、その実現時期は2030年代にずれ込む可能性が高い。
とはいえ、これまでの進捗を踏まえ、同社はすでにいくつかの商業契約を取り付けている。これには、小売大手のアマゾン(Amazon)へのセメント供給契約や、米国最大級のアルミニウム生産企業であるセンチュリー・アルミニウム(Century Aluminum)へのアルミナ供給契約が含まれる。
たとえブリムストーンが新たな産業革命をもたらさなかったとしても、同社はセメントからの排出量を大幅に削減できる体制を整えており、それだけでも注視するに値する理由となる。
さらにブリムストーンが、岩石の採掘・精製に伴うエネルギー、汚染、コストを大幅に削減し、これら他の製品の一部または全部を生産できるようになれば、それは企業としても気候変動対策としても大きな成果となるだろう。
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- ジェームス・テンプル [James Temple]米国版 エネルギー担当上級編集者
- MITテクノロジーレビュー[米国版]のエネルギー担当上級編集者です。特に再生可能エネルギーと気候変動に対処するテクノロジーの取材に取り組んでいます。前職ではバージ(The Verge)の上級ディレクターを務めており、それ以前はリコード(Recode)の編集長代理、サンフランシスコ・クロニクル紙のコラムニストでした。エネルギーや気候変動の記事を書いていないときは、よく犬の散歩かカリフォルニアの景色をビデオ撮影しています。