気候テック10:グーグルにも供給、大規模鉄電池のフォーム・エナジー
米国のフォーム・エナジーは、鉄を使った長時間蓄電池の生産を始め、グーグルのデータセンター向けなど大型案件の契約を重ねている。 by Jonathan W. Rosen2026.10.14
- この記事の3つのポイント
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- フォーム・エナジーが鉄ベースの長時間蓄電池を開発し商業契約を拡大中
- リチウムイオン電池の弱点を補う安価で長時間稼働可能な蓄電技術として注目
- 生産能力の拡大と設置面積の確保が今後の実用化の課題
フォーム・エナジー(Form Energy)は、数日間にわたってエネルギーを貯蔵できる鉄ベースの電池を開発している。同社は工場での供給体制を強化し、商業プロジェクトに関する契約を次々と締結している。
新設の太陽光発電や風力発電は、ほとんどの地域で化石燃料よりも安価に電力を生み出せる。しかし、その発電量は季節や時間帯、天候によって変動する。この変動を補うため、電力会社は電力が豊富なときに充電し、送電網に電力が必要なときに放電できる蓄電池システムへの投資を拡大している。
リチウムイオン電池は、蓄電技術の中で最も急速に普及が進んでいる。軽量でエネルギー密度が高い一方、高価な金属を必要とし、大規模化にもコストがかかる。また、産業用に使われるこの種の大型電池の多くは、4〜6時間を超える長時間のエネルギー貯蔵を想定して設計されていない。
フォーム・エナジーは、より安価な長時間蓄電技術の構築を目指している。同社は、はるかに豊富で安価な金属である鉄を用いた新型電池を開発した。この電池は100時間にわたってエネルギーを貯蔵できる。フォーム・エナジーが「可逆的な錆化(reversible rusting)」と呼ぶプロセスを利用するものだ。放電時には、空気中の酸素が鉄金属を錆に変化させ、電子を放出する。充電時には、電流によって錆が再び鉄金属へと変換される。
過去2年間で、フォーム・エナジーは商業面での勢いを増してきた。同社は、ウェストバージニア州の工場で電池の生産を開始し、最初の商業導入案件として、ミネソタ州の電力会社グレート・リバー・エナジー(Great River Energy)向けに150メガワット時のシステムを手がけている。これは2027年に稼働開始の予定だ。フォーム・エナジーはほかにも複数の電力会社と契約を結んでいる。最大規模のものは、同じくミネソタ州を拠点とする電力会社エクセル・エナジー(Xcel Energy)とのプロジェクトで、フォーム・エナジーの電池30ギガワット時に支えられた風力・太陽光発電が、グーグルの新設データセンターに電力を供給する計画だ。このプロジェクトは2028年から2031年にかけて段階的に稼働を開始する見通しである。
主要指標
- 業界:エネルギー貯蔵
- 設立:2017年
- 本社:米国マサチューセッツ州サマービル
- 注目すべき事実:完成すれば、フォーム・エナジーがミネソタ州のグーグルのデータセンターに計画している30ギガワット時の蓄電システムは、エネルギー容量で世界最大の電池プロジェクトとなる可能性がある。
潜在的インパクト
風力・太陽光発電は、世界の二酸化炭素排出量の増加を抑制する上で大きな役割を果たしている。それでも、多くの送電網運営者は、再生可能エネルギーの供給が少ない時期や需要が高い時期の需給ギャップを埋めるため、化石燃料発電所、特に天然ガス発電所に依存している。フォーム・エナジーの電池は、熱波や厳寒、日照や風の乏しい時期に生じるような、数日間にわたる需給の不均衡に対応できるよう設計されている。同社は現在の電池システムのコストを明らかにしていないが、目標は1キロワット時当たり20ドルに到達することであり、これが実現すれば天然ガスによる代替手段に対してコスト競争力を持つようになるという。
同社の技術は、人工知能(AI)データセンターブームによって排出される二酸化炭素を削減するのに役立つ可能性がある。AIのエネルギー需要の高まりはすでに老朽化した石炭火力発電所の閉鎖を遅らせ、新たな天然ガス発電所の建設を招き、消費者向けの電力料金高騰を引き起こしている。安価な蓄電技術があれば、AI主導によるこの電力需要の増加に、再生可能エネルギーがより多く対応できるようになる可能性がある。

留意点
長時間蓄電市場はまだ黎明期にある。フォーム・エナジーの鉄空気電池技術は、揚水発電、圧縮ガス、燃料電池、重力を利用した装置、液体にエネルギーを貯蔵するフロー電池など、競合する多数のアプローチが入り乱れる分野に直面している。数日間対応型電池は、多額の設備投資を必要としながら稼働していない時間も多いため、その経済性は依然として難しい課題だ。
データセンター開発企業からの資金提供は大きな追い風となり得るが、フォーム・エナジーは実際に供給できることを証明する必要もある。現在の生産能力は年間2ギガワット時の蓄電容量にとどまり、商業契約を通じて約束した80ギガワット時のほんの一部にすぎない。成功は、生産を拡大できるかどうかにかかっている。
もう1つ残る課題は、この技術の物理的な設置面積だ。フォーム・エナジーの電池は輸送コンテナほどの大きさの筐体にまとめて積み重ねられており、2〜3メガワットごとに約4000平方メートルの土地を必要とする。つまり、グーグル向けの設備は、少なくともアメリカンフットボール場75面分に相当する面積を占めることになる。
次のステップ
フォーム・エナジーは最初の商業プロジェクトを完了させることに加え、受注残に対応できるよう生産を拡大するため、工場に新たな設備を導入している。これは8月に発表された新規の資金調達によって支えられるもので、これまでの累計調達額は、ウェストバージニア州と米国連邦政府からの補助金に加え20億ドルを超える。
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- ジョナサン・W・ローゼン [Jonathan W. Rosen]米国版 寄稿者
- アフリカ報道を専門とするジャーナリスト。