廃業企業のメールやSlackがAI訓練に、「葬儀屋」ビジネスが活況
事業を畳むスタートアップのコードやメール、Slackの履歴が、AIの訓練データとして売られている。仲介企業の1社は150件超の取引を手がけ、8月にはグーグルが破産手続き中のスピリット航空のデータを1000万ドルで購入した。だが、データには個人のプライベートな情報が潜み、弁護士は「AI訓練の無法地帯」と警鐘を鳴らす。 by Matthew King2026.10.15
- この記事の3つのポイント
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- 消滅スタートアップのコードやワークスペース・データをAI訓練用に売却する市場が急成長中
- 公開データ枯渇を背景に、グーグルがスピリット航空の破産データを買い取る事例も
- プライバシー保護や従業員への利益配分など法的・倫理的課題が未整備のまま拡大
キーラン・ミスケルが今年、自身の暗号資産スタートアップを畳み始めたとき、彼はそのデータにさほど価値があるとは思っていなかった。ユーザーは匿名だったし、会社自体も設立から数年しか経っていなかったからだ。しかしその後、彼は会社のデジタル・アーカイブを実際のお金に変えることに成功した。コードベースでおよそ2万5000ドルを手にし、Google、Notion(ノーション)、Figma(フィグマ)、Slack(スラック)上のワークスペース・データについても、まだ確定していないものの約1万5000ドルが見込まれている。「2年半かけてやってきたことすべてが、どこかの誰かにとって価値があるとわかっただけでも良かったです」とミスケルは語る。
この売却を仲介したのは、シンプルクロージャー(SimpleClosure)という企業だ。同社は、消えゆくスタートアップを相手にするという、テック業界における新たな成長分野の一角を担っている。カルタ(Carta)やエンジェルリスト(AngelList)の推計によれば、ここ数年、スタートアップの閉鎖件数は年26〜56%の割合で増加しているという。そしてコーチや「デス・ドゥーラ(死の付き添い人)」、さらには倒産に伴う法務・税務・業務上の厄介事を処理する企業など、終末期を支える一大エコシステムが生まれている。今や、こうしたテック業界の「葬儀屋」たちは、データの遺品を人工知能(AI)研究機関に売却している。
シンプルクロージャーは4月、データ販売をサービスに加えた。同社のプラットフォーム「Asset Hub(アセットハブ)」は、創業者がコードや、メール、チャット、文書といったワークスペース・データを売却する手助けをする。買い手には、基盤モデルを手がけるAI研究機関、AI訓練用の模擬ワークスペースを構築するベンダー、そして自社モデルを開発する成熟したテック企業などが含まれる。アセットハブはこれまでに150件を超える取引を手がけており、2026年末までにスタートアップ側に1000万ドル超を還元する見込みだという。最高経営責任者(CEO)のドリ・ヨナは、かつてはまれで「どこかタブー視されていた」こうした取引が日常的なものになりつつあると実感しており、現在シンプルクロージャーの取引の47%がコードやデータの販売を含んでいるという。
競合も存在する。業界のライバル企業サンセット( …
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