ドンジン・ソ(ニューラリンク)

Dongjin Seo ドンジン・ソ(ニューラリンク)

脳・機械インターフェイス(BMI)開発の一環として、頭蓋骨に開けた孔に収まる低消費電力ワイヤレス・コンピューターチップを設計している。 by MIT Technology Review Editors2021.01.29

6年前、ドンジン・DJ・ソは、「工学を通じて世界をより良くする方法に強い直感を持つ科学者になりたい」とよく口にしていた。当時、ソはカリフォルニア大学バークレー校のごみごみした研究室の一角で、「ニューラルダスト」と呼ばれるコンセプトの研究をしていた。ニューラルダストは、動物の脳に散布する、音波で制御可能な超小型の電子センサーだ。

そのプロジェクトの目標は、大脳皮質内のニューロンの発火を読み取り、情報を送り返すことさえもできる新しいタイプの脳・機械インターフェイス(BMI)の開発であった。この種のテクノロジーにより、脳との間で情報を読み書きする方法への道が開ける可能性があるのだ。

そして2016年、イーロン・マスクは、人間の脳とコンピューターを円滑に接続するインターフェイスの製作に数百万ドルを費やす準備ができている新会社、ニューラリンク(Neuralink)の一員としてソを抜擢した。「イーロンが描いたビジョンを前にノーと言うことはできませんでした」とソは言う。「それは私がそれまで想像してきたすべてだったのです」。

ニューラルダストの代わりにニューラリンクが目指しているのは、動物の脳に極薄の電極を設置するロボットの開発だ。ソは十数人で構成されるチームを率いて、頭蓋骨に開けた小さな穿頭孔に収まるサイズの低消費電力ワイヤレス・コンピューターを設計している。ソの主な役割は必要な回路基板とチップの設計だ。「ノイズのように見える信号を収集し、処理するといった作業すべてを、脳を焦がすことなく実行するためには、こうしたチップが必要なのです」とソは言う。

ニューラリンクは、動物でのテストを終えた後、麻痺のある人や重い病気を抱える人に対し、この方法で脳への接続を試みたいと考えている。最終的には、健康な人の「増強」が「明確な成果となります」とソは語る。「この技術は人々が世界と繋がる能力を高めるものなのです」。