ヘラ・フサイン(チャイアン)

Hera Hussain ヘラ・フサイン(チャイアン)

クラウドソーシングを駆使した非営利団体は、女性への暴力や抑圧に立ち向かう。 by MIT Technology Review Editors2018.07.08

ヘラ・フサインは、社会革新と技術革新のシンプルな組み合わせによって、世界中の女性に活力を与えている。家庭内暴力事件に関する訴訟を弁護士抜きで起こす方法や、心理操作を特定する方法といった話題を扱う多言語のオンライン・ガイドを、クラウドソーシングでボランティアを募って作成している。

この活動は、家庭内暴力を受けていた2人の友人を助けようとしたことから始まった。「英国なら、離婚手続きや庇護申請、子どもの親権請求に関する法的な情報は簡単に手に入るとたいていの人は思うでしょう」とフサインは話す。「しかし、実際にそういった情報を得るのは恐ろしく困難なのです」。

2013年、フサインは余暇を使ってオープン・ソースの非営利団体「チャイアン(Chayn:ヒンディー語で「選択」)」を創設し、入手が難しい情報を簡単に見つけ、理解できるようにした。チャイアンに協力しているボランティア400人のうちの70%が、暴力や抑圧から逃れて助かった人たちだ。チャイアンのオンライン・ガイドは、女性に対する抑圧に伴う心理的、文化的、法的な複雑さが互いに重なりあった直接的な経験と、クラウドソーシングによる調査によって構築されている。

チャイアンのガイドに掲載されているような内容は、法的または学術的な専門知識のない人々によって書かれるべきではないとする人々(主に男性)から、フサインは数え切れないほど非難されてきた。「ひどく見下されることもよくあります」とフサインはいう。こうした意見に対抗してフサインが例として挙げるのは、夫による虐待から逃れる方法を見つけるために何年も費やしたインドの女性だ。この女性がオンラインで見つけた資料は、すべてインドの弁護士(それもほとんどすべて男性)が書いたもので、離婚に法律を利用し、従順な妻ではない女性を嘆くものだった。

フサインは引き続きチャイアンが適切なテクノロジーを利用できるように推進し、より多くの女性に働きかけていく。たとえば、新しいチャット・ボットは、もっとも関連性の高い情報に、最も少ないクリック数でアクセスできる、といった具合にだ。

(ラス・ジャスカリエン)