アドナン・メホニッチ(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、イントリンシック)

Adnan Mehonic アドナン・メホニッチ(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、イントリンシック)

コンピューター・チップに最も一般的に使われる素材である二酸化ケイ素を使って、人工知能(AI)システムのエネルギー効率を劇的に高める可能性がある新たな電子部品「メモリスター」の開発に取り組んでいる。 by MIT Technology Review Editors2022.01.14

メモリスターは、1971年に初めて理論上の存在が提唱された新たなタイプの電子部品だ。2008年、ヒューレット・パッカードの研究チームが、二酸化チタンでできたナノデバイスにおいて、初めてその実在を示した。しかし、当初考えられていたように、フラッシュメモリに代わる技術として台頭することはなかった。

抵抗器(レジスター)は電流の流れを制御する回路要素である。メモリスターはその名の通り、メモリーを備えた調整可能な抵抗器のようなものだ。電源を切ると、メモリスターは直近の抵抗を「記憶する」。これにより、メモリーとロジックを統合した、より速く効率的なチップの誕生が期待される。

アドナン・メホニッチ博士は、コンピューター・チップにもっとも一般的に使われる素材である二酸化ケイ素を使ったメモリスターの開発に取り組んでいる。直近の目標は、高密度で、電力消費が少なく、高速に動作するメモリーを生み出すことだ。さらに野心的な挑戦として、メモリスターの物理特性を利用して、メモリー内演算と脳に似た機能性を、未来のニューロモーフィック(神経模倣)システムに実装することを目指している。

メモリスターの潜在的用途はさまざまだが、そのひとつとして人工知能(AI)システムのエネルギー効率を劇的に高める可能性があると、メモリスターの支持者たちは言う。メモリスターの「クロスバーアレイ」は、深層学習のタスクを現在のハードウェアの500分の1のエネルギーで実現できる可能性があるという。メホニッチ博士が共同創業したスタートアップ企業であるイントリンシック(Intrinsic)は、2021年3月のラウンドで190万ドルの資金を調達した。

( Patrick Howell O’Neill)