クアンサン・ヤン(MIT)

Quansan Yang クアンサン・ヤン(MIT)

生分解性を備えた微小電気機械システム(MEMS)チップを発明すると同時に、低コストで廃棄物を最小限に抑えた新たな製造プロセスも開発。デバイスのライフサイクル全体で持続可能性を実現する。 by MIT Technology Review Editors2023.10.16

クアンサン・ヤンは、環境に優しいチップを開発している。血圧計や加速度計などのセンサーによく使われる小型チップの一種である「微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)」は頑丈に作られているため、使い終えると電子廃棄物になることが多い。ヤンは、MEMSチップを分解可能でありながら高い効果を発揮できるようにする材料とチップ構造を発見した最初の人物だ。

ヤンの研究は、生物医学の分野で重要な意味を持つ。患者は、特定の生体指標をモニターするMEMSインプラントの外科手術を受けた後、それを除去するために再び手術を受ける必要はない。装置は数カ月で分解され、体内に吸収される。このイノベーションは、使用後に分解される農業用センサーや環境センサーの製造にも利用できる。手作業による除去の必要性がなくなると同時に、装置が環境を汚染するのを防げるのだ。

ヤンの業績はそれだけではない。生分解性チップを効率的に、低コストで、廃棄物を最小限に抑えて製造するために、レーザーを使った新しい製造プロセスも発明した。「多くの人々が(チップの)製造を持続可能なものにしたいと考えています。分解可能な電子機器を作ろうとしている人たちもいますが、製造プロセスは実際には持続可能ではありません」とヤンは語る。ヤンの研究は、持続可能性を実現するより全体的なアプローチの基礎を築くものだ。「製造から動作、後処理に至るまで、装置のライフサイクル全体を持続可能なものにできれば、とても素晴らしいことです」。

(ヤン・ズェイ)