落合 陽一(筑波大学/ピクシーダストテクノロジーズ)

Yoichi Ochiai 落合 陽一(筑波大学/ピクシーダストテクノロジーズ)

「デジタルネイチャー」の到来を目指す構想家。メディアアーティストとしての表現活動の評価も高い。 by MIT Technology Review Japan2021.01.20

筑波大学の准教授でありピクシーダストテクノロジーズの代表取締役である落合陽一は、計算機と自然が融和した技術環境である「デジタルネイチャー(計算機自然)」というビジョンを提示し、空間視聴触覚技術に関する研究開発を進めてきた。

デジタルネイチャーは、コンピューターと非コンピュータリソースが親和することで再構築される新たな自然環境であり、人・モノ・自然・計算機・データが接続されて脱構築された新しい自然である。落合准教授は、デジタルネイチャーを実現し、デジタルネイチャーにおける文化を考えるために、計算機科学、物理学、生物、波動工学、材料科学、インタラクション、ユーザビリティ、芸術表現、デザインにまたがった学際的領域を研究者として探求し、起業によってそれを社会実装しながら、アーティストとして批評的に表現している。

触覚や空間インタラクションを伴う落合准教授の研究は、計算機ホログラムを用いた物質的な描画手法を生み出し、多くの後続研究につながる成果を上げている。例えば、東京大学大学院博士課程で研究していた三次元音響浮揚技術は、多数のスピーカーアレイが発する超音波で小さな物体を空中に浮上させ、上下左右あらゆる方向に動かすというものだ。超音波を格子状に発することで、焦点で音波が増幅されて圧力が生み出される仕組みであり、超高純度医薬品の試験などに応用される可能性があるという。

自身が代表を務めるピクシーダストテクノロジーズでは、人類と計算機の共生ソフトウェア基盤となる仕組みを構築し、自治体や企業とのオープンイノベーションを促進する事業を展開。日本の政府機関である科学技術振興機構の研究プロジェクト「CREST xDiversity(クロスダイバーシティ)」ではアクセシビリティ領域への応用を研究し、自ら設立した一般社団法人xDiversityでは一般向けの普及活動を行なっている。アートとエンジニアリング領域の越境による独自の世界観を追及するメディアアーティストとしての表現活動に対する評価も高い。

(中條将典)