CRISPRは人間には使えない? (でも解決策はある)

Uh Oh—CRISPR Might Not Work in People CRISPRは人間には使えない? (でも解決策はある)

ヒトの血液サンプル調査から驚くべきことがわかった。最も重要な遺伝子工学上の進歩の1つである「クリスパー(CRISPR)」に対して、ほとんどの人が免疫を持っているかもしれないというのだ。 by Antonio Regalado2018.01.11

ヒトの血液サンプル調査から驚くべきことがわかった。最も重要な遺伝子工学上の進歩の1つである「クリスパー(CRISPR)」に対して、ほとんどの人が免疫を持っているかもしれないというのだ。

その抗体は私たちの血液の中にある。科学者は22人の新生児と12人の大人の血液を調べ、Cas9の2つの最も重要な型への抗体を探した。Cas9はクリスパーにおいて重要な役割を担う、DNAを切断するタンパク質だ。その結果、調査した人々の65%以上からCas9に対する免疫分子が発見された。

この研究結果が意味することは重大だ。大きな期待がかけられているクリスパーによる治療が、免疫によって機能しなくなるかもしれないのだ。スタンフォード大学のマシュー・ポルテウス准教授らはバイオアーカイブ(bioRxiv)で発表した論文で、免疫反応のせいでクリスパーによる治療の「安全で有効な利用が妨げられ、重篤な毒性を患者にもたらしかねません」と書いている。

なぜ私たちはこのような免疫を持っているのだろうか? Cas9タンパク質の最も一般的なバージョンは黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌という、しばしば人に感染する2つのバクテリアに由来している。人体には当然、それらのバクテリアへの備えがある。

問題の解決策として考えられるのは、例えば熱水噴出孔に棲むバクテリアなど人体が出会ったことのないバクテリアの発見を待つことだ。体内から採取した細胞をクリスパーで治療してから、再び体内に戻す方法も有効だろう。