不動産サイトでの導入が米国で始まり、バーチャル・リアリティはゲーム以外でも使えることを証明
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Building a Library for VR, One Image at a Time 不動産サイトでの導入が米国で始まり、バーチャル・リアリティはゲーム以外でも使えることを証明

写真なみに美しいスキャン画像のライブラリーのおかげで、実質現実空間でもインターネットが使えるようになった。 by Signe Brewster2016.10.12

米国の不動産サイトで一戸建てやアパートを探すと、写真の右下に、メガネの形をした新しいアイコンがあることに気がつくかもしれない。アイコンをクリックすると、360度の実質現実モードが起動し、グーグルのカードボード(段ボール製のVRゴーグル)やサムスンGear VRを装着し、「実際に」物件を内覧できる。

VR映像を実現しているのは、マターポート(本社サンフランシスコ)が実質現実(VR)用に変換した25万枚以上の3Dスキャン画像を収蔵するライブラリーだ。現段階で、デスクトップ・コンピューターの性能に見合うほど精緻なVRコンテンツが豊富に揃っているわけではないが、マターポートが提供する写真のようにリアルなスキャン画像のライブラリーは、従来のインターネットブラウジング体験をVRで向上させるのに役立つだろう。

マターポートの最初の提携先は、不動産などの高額物件業界に集中しており、realtor.comapartments.comサザビーズ等のWebサイトが、VRヘッドセットアイコンを一部の写真に設置している。ライブラリーは住宅の3Dスキャンだけに留まらない。マターポートの3Dスキャンカメラがあれば誰でも(価格は4500ドルなので、企業や撮影スタジオが購入するような高性能のカメラだが)、スキャンした画像を1枚19ドルでライブラリーにアップロードできる。アップロードされた画像は、ブラウザベースの3Dモデルから、マターポートが得意とするVRで再生可能なコンテンツに変換される。

マターポートは作品を全てを開発者向けに公開している。開発者は3D空間を選んでその上にソーシャルやゲーミング機能を構築できる。また、現行の不動産業界の提携先が使っているアプリケーションを拡張し、VRで見て回れる3Dスキャンされた室内に、バーチャルな家具や絵画を設置できる。

VRは視覚中心のメディアだ。現在のところ視覚部分のほとんどは作り込みが必要だが、VRの歴史はあまりにも短いため、近年のインターネットを面白くさせているような出来合いの素材があまり存在しない。

マターポートの共同創業者マット・ベル最高戦略責任者(CSO)は「VR用のコンテンツを最初から作るのはとても難しいのです。もし誰かのアパートの室内を、3Dデザイン用のソフトウェア上で沢山の写真と寸法だけで3Dモデルを構築しようとすれば、何週間もかかる作業になります」という。

拡張型オンラインソーシャルの『セカンド・ライフ』の開発元リンデン・ラボは、VR向けの新しいソーシャル・アプリケーションを開発中だ。ソーシャル・アプリケーションの新作『サンサー』は『セカンド・ライフ』と同様、ユーザーは場所や物を自分の空間に取り込みカスタマイズできる。ゲーム内で他の人と交流ができ、またオブジェクトをプログラムすればほとんど何でもできるようになる。

リンデン・ラボのエブ・アルトバーグCEOによれば、既存コンテンツをVRに取り込む課題に、同社も取り組んでいる。現実のエジブトの墳墓を3Dスキャンを取り込んだデータは、サンサー上に実際に公開されている。おかげで、バーチャルなソーシャル・コミュニケーションを墳墓内でできるようになった。

「このような方法の他に、どうやってエジプトの墳墓を訪ね、その中で人と会話ができると思いますか?」と、アルトバーグCEOはいう。

サンサーはVR内に3Dスキャンを取り込むことで旅行をシミュレーションできることを示す良い例だ。この方法なら、高額で行けない場所やとても危険な場所をユーザーが訪れられる。アルトバーグCEOはさらに教育、広告、技術訓練の分野でも活用できると考えている。

VRが普及するにつれ、使用あるいは編集できるコンテンツは増えていくだろう。現時点では、私たちのインターネット上での日々の行動に、生まれたばかりのVR業界がどのように組み込まれていくかを、マターポートのライブラリーが示している。