アルゴリズムは、人事と労務管理をどう変えるのか?
ビジネス・インパクト

Hired and Fired by Algorithm アルゴリズムは、人事と労務管理をどう変えるのか?

仕事を探し、守り、失うという一連のサイクルは、アルゴリズムによる影響が大きくなっている。いくつかのデータマイニング企業は「人事」の中から「人」の要素を排除しようとしている。 by Julia Sklar2015.09.28

ステップ1 :採用候補の発見

マイクロソフトを顧客にもつテクスティオ(本社シアトル)は求人票を評価して、適切な人材が集まる可能性を予測する。たとえば「一流(top tier)」「重要な任務(mission critical)」などの言い回しは女性の応募者を遠ざける傾向がある。ギルド(本社サンフランシスコ)は、リンクトインやギットハブなどのサイトのデータを精査し、フェイスブックやHBOなどの顧客に、人材候補がいつ新しい求人に興味を持つのかを伝える。ヘッドハンティング会社コーンフェリーが開発したアルゴリズム「KF4D」は、特定の業界や地域の有能なリーダーの特性を計算できるので、雇用主はそのモデルと実際の候補者を比較できる。

 

ステップ2:従業員の追跡(監視)

近年、従業員の不正による罰金は何十億ドルにもなるため、ウォール街の企業の多くは不正行為の検出と予測のために、従業員を詳細に追跡し始めた。JPモルガンが開発したシステムは、経営管理システムを改善する7億3000万ドルのプロジェクトの一部として、従業員がコンプライアンス講習会に出席したかなどのデータを集めて、従業員のふるまいに関する予測モデルを発展させている。ゴールドマンサックスとクレディスイスが出資するデジタルリーズニングは、違法行為を予測し、防止するために、何十億人もの従業員のメール、電話番号、オンライン上のチャットを分析している。

 

ステップ3:離職

従業員分析会社であるビジアー(本社カリフォルニア州サンノゼ)によれば、望ましくない形で従業員が離職すると、平均的な大企業では年間3100万ドルのコストがかかるという。ビジアーはヤフー、コンアグラ、日産自動車などの顧客企業の2、3年分のデータを使い、予測モデルを構築している。ビジアーによると、このモデルはどの従業員が3カ月以内に離職しそうかリスクを予測するのに、人間の直感よりも最高で8倍も優れているという。各従業員のリスク点数は、年齢、給料、所属部門、前回の昇進からの経過時間に基づいている。ビジアーは200万人以上の従業員のデータを管理している。

 

ステップ4:次の仕事を見つける

アンソロジー(本社シアトル、旧称ポーチャブル)は、いわばビジネス界の出会い系アプリだ。転職先を探す求職者と、人材採用を望む企業がそれぞれ匿名で、自分たちが望む条件について情報を提供する。両者の希望が合致したときに限り、求職者と企業は直接連絡できる。設立からほぼ1年が経過したアンソロジーは、アマゾン、フェイスブック、IBM、ネットフリックスなどが顧客だ。約5万人の求職者が無料でアプリを使っている。アンソロジーへの出資額は180万ドルに上る。