新華社通信にAIキャスター「外観は人間そっくり、知性は皆無」

This is fake news! China’s ‘AI news anchor’ isn’t intelligent at all 新華社通信にAIキャスター「外観は人間そっくり、知性は皆無」

上のテレビ番組のキャスターをご覧いただきたい。ぱっと見ではまったく普通に見えるかもしれないが、なんだかちょっとぎこちない。注意深く見ると、声の調子や唇の動きに何だか妙なところがあることに気づくだろう。 by Will Knight2018.11.12

上のテレビ番組のキャスターをご覧いただきたい。ぱっと見ではまったく普通に見えるかもしれないが、なんだかちょっとぎこちない。注意深く見ると、声の調子や唇の動きに何だか妙なところがあることに気づくだろう。

それはこのキャスターが本物の人間ではないからだ。

デジタルで合成されたこのキャスターは、北京を本拠地とする検索エンジン会社のソゴウ(Sogou:捜狗)と、中国の新華社通信が共同で開発したものだ。ソゴウは、いくつかの最先端の機械学習技術を用いて、本物の人間のような外観と声を複製し、再現した。同社は、本物のキャスターの映像とその映像に対応する文字データを自社のアルゴリズムに入力して訓練し、それなりの模造品を作り出した。このキャスターはどんなことでもしゃべってくれる。

しかし、ここではっきり言っておこう。この偽キャスターはどう見ても知性を感じさせない。しょせんは台本を読むだけのデジタルの操り人形にすぎない。この場合の「人工知能(AI)」とは、本物そっくりの顔と声を作り出す方法を学習するソフトウェアのことだ。確かに感心はさせられるが、機械学習における非常に狭い意味での一例にすぎない。それを「AIキャスター」と呼ぶのは勝手だが、若干混乱を招きそうだ。

この種のテクノロジーは、アニメーション、特殊効果、ビデオゲームなどの質を向上させるのに役に立つ。しかし、誤った情報を広めたり、他人の評判に傷をつけたりするのに悪用されることも当然懸念される。同様の方法である人の顔を別の人の顔にすり替えることも可能であり、それはあらゆるたぐいの「職場で閲覧禁止」の映像を作り出すのにすでに使われているのだ。

両社はこれまでに2人の偽キャスターを作り出した。1人は英語を話し、もう1人は中国標準語(マンダリン)を話す。新華社通信は自社のウィーチャット(WeChat)チャンネルにこの2人を登場させ、「プロのニュースキャスターとして自然に文章を読むことができます。公式Webサイトやさまざまなソーシャル・メディアのプラットフォームで24時間働けるので、ニュース製作経費を削減し、効率を向上できるでしょう」と報告している。

2カ月ほど前、ソゴウの王小川(ワン・シャオチュアン)CEO(最高経営責任者)が北京の清華大学で講演をしたとき、いくつかのAIプロジェクトを実演してみせた。その1つに、ビデオ電話をしている間、有名な映画スターの顔をそっくりそのままリアルタイムで自分の顔に移せるというものがあった。1つ明らかになっているのは、私たちの未来は極めて奇妙なものに見える(聞こえる)ということだ。