情報公開請求でわかったアップルの長期的医療戦略
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FDA E-mails Reveal Apple’s Long Game for Health Tech 情報公開請求でわかったアップルの長期的医療戦略

FDAとの密接なコミュニケーションは、アップルが医療機器の開発に多額の投資をしている一方で、その開発を急いでいないことを示している。 by Jamie Condliffe2016.11.30
「ケアキットCareKit」を発表するアップルのジェフ・ウイリアムズCOO(最高執行責任者)

アップルは、医療分野への関心を隠していない。しかし、アップルの幹部と米国食品医薬品局(FDA)との電子メールによって、アップルが個人用健康管理デバイスへの進出を計画していること、FDAとのやりとりを秘密にするよう細心の注意を払ってきたことが判明した。

情報公開法に基づく請求でMobiHealthNewsが入手した電子メールには、アップルが、過去3年にわたってFDAと定期的にコミュニケーションを取ってきたことが示されている。アップルとFDAの初会合があった2013年以前から、アップルは医療機器を開発しているはあった。

特に最近の電子メールは、アップルは、何らかの形で心臓をモニタリングする機器やパーキンソン病を診断するアプリを開発していることを示している。

アップルはすでに「ケアキット(CareKit)」フレームワークにより、パーキンソン病を管理するいくつかの方法に関わっている。アップルは、内蔵センサーで体の動作を測定し、マイクロフォンで声を分析し、画面上のテストで反応や機敏さを診断する、セージ・バイオネットワークス(Sage Bionetworks)とロチェスター大学のアプリを紹介済みだ

アップルのディビヤ・ナグ(LinkedInのプロフィールではアップルで特別な計画に関わっている)からFDAのデジタル・ヘルス部門のバクル・パテル副所長にあてた電子メールでは「パーキンソン病に関するテレヘルス(遠隔モニタリング)の使用事例と診断アプリについて話し合う」会合の手配について書かれており、FDAは積極的にアプリの準備に関わってきた可能性を示している。また、アップルが「実行に移す前に理解すべきFDAの検討事項が何かあるか」どうか理解しようともしている。

他に、当時のアップルの主任弁護士だったロビン・ゴールドステインからパテル副所長への電子メールには、アップルが会合で「心臓病のサービスにおいて2つの有力な(そして関連する)製品について、関連規制、品質システムと要件を話し合おう」としていたことが書かれている

こうした電子メールの内容から、心臓の健康を管理する何らかのウェアラブル機器の存在が浮かび上がる。アップル・ウォッチにはすでに、心拍数を測るハードウェアが内蔵されており、複数のスタートアップ企業も、深刻な心臓病を抱える人を助ける機器にできる医療水準のアドオンの開発を始めている。

アップルの健康関連テクノロジーの進捗は、ゆっくりだが着実だ。アップル・ヘルス・アプリの発表後、アップルは、CareKitの提供に使えるソフトウェア・フレームワーク(開発者が新しいソフトウェアを構築しテストできるプラットフォーム)を少しずつ開発している。

ティム・クックCEOは、アップルのスタッフは「アップル・ウォッチをFDAの手続きにかけたくないと思っています(略)なぜならそうなると、私たちは革新的な取り組みを我慢することになりますから」と、以前語っていた。しかし、アップルは、アプリや何か追加のハードウェアなどを「アップル・ウォッチに接続する形ならFDAのプロセスにかけてもかまわない」とも述べた。

アップルだけが医療ハードウェアに取り組んでいるわけではない。アルファベットの健康関連スピンオフ企業ベリリ(Verily)は、心臓の活動を測定する健康追跡時計を開発している。MIT Technology Reviewは試作機を目にしている

個々に見ると、アップルとFDAのやり取りから、アップルのヘルスケア計画について詳しくはわからない。しかし全体としては、クックCEOをはじめとする幹部が、市場参入に向けた、ゆっくりと、整然とした駆け引きに満足していることが電子メールから読み取れる。恐らく、アップルが市場に参入すれば、ライバル企業も黙ってはいられないだろう。

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