米テック企業、AIへの政府補助金の増額と規制延期を米議会で要請
ビジネス・インパクト

The Government Isn’t Doing Enough to Solve Big Problems with AI 米テック企業、AIへの政府補助金の増額と規制延期を米議会で要請

人工知能について、業界の有力者は、テクノロジーの開発を具体化させることに米国政府がもっと大きな影響力を発揮すべきと述べた。 by Mike Orcutt2016.12.12

米国政府は人工知能時代の新ツール開発に、もっと大きな役割を果たすべきであり、そうでなければ、米国民は、事業化の芽がはっきり見えないという理由で、革命的なアプリケーションを逃してしまうかもしれない。

著名なAI技術者や研究者が先週、米国議会上院で開催された公聴会で発したメッセージの概略だ。AIは飛躍的に進化する重要な段階にあり、米国政府にはAIの将来を形づくるまたとない機会がある、というのが出席者の一致した見解だ。さらに米国政府は、広範囲の社会問題に狙いを定めたAIアプリケーションへの投資について、テック企業よりもよい立場にある、と出席者は述べた。

現在、米国ではグーグルやフェイスブックを筆頭に、ほんの数社がAIの研究開発の大半を担っている。しかし、マイクロソフト・リサーチ(ワシントン州レドモンド)のエリック・ホロビツ社長(技術フェロー)は、公聴会に出席した議員に対し、産業界が大きく投資していないホームレスや麻薬常習者対策など、AIの革新にとって十分に熟した重要分野があり、米国政府はそうした研究を支援できる、と述べた。

テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員は、AIの将来について公聴会を招集した

カーネギーメロン大学コンピューター科学部のアンドリュー・ムーア学部長は、より具体的な例として、退役軍人が受けられる医療サービスについて、オンラインで情報を探すときの苦労を思い描くべきだ、という。もし自由形式の質問に回答し、一度に多数の行政機関の情報を検索し、退役軍人の保険医療の選択肢について役立つ情報を提供できるアプリケーションが商業的に魅力的なら、もう存在するはずなのだ、とムーア学部長は述べた。

非営利の研究機関オープンAIの共同創立者であるグレッグ・ブロクマン最高技術責任者(CTO)は、テクノロジストはAIが最も重要な発展をまだ遂げていないと自覚しており「基礎研究への真剣な渇望があります」と述べた。もし米国がAI研究の大部分を今後も業界任せにすれば、有用なアプリケーションを逃すだけでなく、テクノロジーが未成熟の段階で倫理や安全性、セキュリティに関する喫緊の科学的課題を適切に探究する機会も逃しかねない、とブロクマンCTOは述べた。AIの分野は「指数関数的」に成長しており、こうした課題はいま研究しておくことが重要であり、政府はこうした課題を「最優先の未解決課題」にできる、とブロクマンCTOは述べた。

公聴会は討論会というよりも壮行会に近かった。議員は、政府が支援できる分野だけでなく、AIが事業環境や米国の国際的競争力に及ぼす影響についても、参加者の意見を探った。公聴会を招集したテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)は、米国はAI開発の主導権を、中国等の諸外国政府に譲るべきではないとの懸念を示した。

テクノロジーの安全性と付随する雇用削減の可能性に関する議員の懸念に対して、ホロビツ社長とブロクマンCTOは、安全性と雇用への影響は長期的問題であり、その対応には、今こそこの問題に集中し、研究にさらに投資する必要があると答えた。ホワイトハウスは同様の議論を展開する「米国人工知能研究開発戦略計画」を10月に公表済みだ。

ブロクマンCTOは、もし政府や他の非営利団体がAIの分野でもっと大きな役割を果たさなければ、「力強いシステムを構築する」ために必要な知的財産、インフラ、専門技術は、ほんの1社か数社だけに管理権を奪われてしまう危険性がある、と警告する。いずれAIは人類すべての生活に影響するようになる、というブロクマンCTOは「したがって、AIが人類にどのような影響を及ぼすかに関して意見がある人は、米国民の代表であることが大切なのです」と述べた。