米国政府の気候データ100TB以上を新政権から保護する動き
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Climate Data Preservation Efforts Mount as Trump Takes Office 米国政府の気候データ100TB以上を新政権から保護する動き

トランプ政権の見解と相容れないデータが削除される不安から、各大学は環境関連のデータを保護するハッカソンを開催している。 by James Temple2017.01.23
NASAの研究者は、西南極の氷床が不可逆的に融解しており、海面上昇の原因になっている可能性があると考えている

新大統領の就任を記念して、カリフォルニア大学ロサンゼルス校コンピューター科学部の学生の多くが、米国の気候情報データベースをダウンロードした。トランプ政権下で、データベースが消滅することを恐れたのだ。

新政権は気候問題に否定的な人物を政府機関各所に配置しており、こうした人物はおそらく政権の方針に反する科学データの利用を停止させたい意向のはずだ。こうした不安の中、草の根的なデータ保存の動きがここ数週間で続いており、20日のハッカソンもこの一部だ。データ消去の不安が現実味を帯びてきたのは16日からで、この日、米国環境保護庁(EPA)の政権移行チームが同庁のWebサイトから気候関連のデータを削除しようとしているとInside EPAが報じてからだ。Inside EPAは、EPAの政権移行チームに近い人物が情報源だという。

先月トロント大学で開催されたゲリラ・アーカイブや、インターネット・アーカイブが1月初めにサンフランシスコで開催した政府データハッカソン、先週ペンシルベニア大学で開催されたデータレスキュー・フェリーなど、政府データに関するハッカソンは以前から開催されていた。

集められたデータのほとんどは任期終了Webアーカイブ(大統領任期の終わりに政府のWebサイトのデータを協力して保存する運動)のサーバーに保存されている。ペンシルベニア大学の「環境人類学におけるペン大プログラム」は標準的なWebクローラーツールでは収集できない環境データを保存する一環として、別にデータ避難プロジェクトを立ち上げた。

こうしたグループの多くは、NASAや米国海洋大気庁、米国地質調査所等の政府機関の極めて重要なデータを網羅した一覧表を用意した。先月初め、気象学者で気候ジャーナリストのエリック・ホルタスツイートによって、クラウドソーシングによる一覧表の作成が活発になった。

他の重大な事態(政権移行チームが、ここ数年の気候変動に関する会議に出席したスタッフの一覧表を米国エネルギー省の職員に求めたり、「政治的に正しい環境モニタリング」事業からNASAは撤退すべきという公式声明が選挙公約の上級アドバイザーから発表されたりした)によっても、アーカイブ作成は加速している。

憂慮する科学者同盟(UCS)の科学と民主主義センターのグレチェン・ゴールドマン研究所長は「政権移行チームが、科学データを尊重すると信じられるだけの根拠がないのです。データが新政権にとって不都合な場合には特にそうです」という。ゴールドマン研究所長によると、米国内外で現在も継続している気候変動研究にとって、米国政府の歴史的なデータベースは極めて重要だという。

正確にいうと、トランプ政権はデータベースの消去や利用を禁じる計画を明言したわけではない。しかし、州政府や連邦政府が方針と異なる科学データを編集したり削除したり軽視したりした前例は確実にある。

昨年末には、ウィスコンシン州天然資源省のWebサイトに記載された文章が大幅に修正され、気候変動への言及が削除されたことが明らかになった。また2007年には、議会による広範囲の調査があり、報告書は結論で、ブッシュ政権は「気候変動科学を操作し、地球温暖化の危険について議員と国民を欺く組織的な工作に関わっていた」とした。

実際、政権移行により、政府のWebサイトはさまざまな理由でかなり変更される。2008年と2012年に任期終了プロジェクトに協力したインターネット・アーカイブによれば、政府が管理する.govサイトにあるPDFファイルの80%以上が2008年(オバマ政権一期目)から2012年(オバマ政権二期目)の4年間で消失したという。

政府機関のサイトのバックアップを取得することへの関心が高まっていることをインターネット・アーカイブは目の当たりにしている。特に環境に関する情報は、バックアップへの関心が高いという。収集されるデータの容量は最終的に100テラバイトを優に超える見込みで、Webアーカイビングのジェファー・ソンベイリー所長は、過去数年間で収集したデータ量の3倍近くになるという。