ロシアのインターネット断絶で現実味増す「スプリンターネット」
コネクティビティ

Russia is risking the creation of a “splinternet”—and it could be irreversible ロシアのインターネット断絶で現実味増す「スプリンターネット」

世界共通のコミュニケーション基盤である、単一のグローバル・インターネットの存続が揺らいでいる。もし、インターネットの分断(スプリンターネット)が起こったら、元に戻すのは難しいだろう。 by James Ball2022.03.28

ロシアが西側諸国のオンライン・サービスから断絶したのは、現実の世界貿易ルートから断絶したのと同様に、突然の出来事であり、完全なものであった。

フェイスブックはロシア当局によって完全にブロックされており、ツイッターもほぼ完全に遮断されている。さらに、アップル、マイクロソフト、ティックトック(TikTok)、ネットフリックスなど、多くの企業がロシア市場から自主的に撤退した。ロシアは急速に、イランのようなデジタル・パーリア国家(日本版注:国際的に孤立した状態にある国家のこと)になりつつある。

一方、欧州連合(EU)は、ロシアの特定のサイトをインターネットから一掃しようとしている。国営放送のRT(旧ロシア・トゥデイ)とスプートニク(Sputnik)に対する新たな禁止措置では、これらのサイトをブロックするだけでなく、検索エンジンやソーシャルネットワークに対し、上記サイトからのコンテンツを引用する投稿を非表示にするよう求めている。

しかし、これらの断絶されたものはすべて、インターネットを動かすテクノロジーや取り決めというよりもむしろ、インターネットを利用したサービスに過ぎない。フェイスブックがある国でブロックされるということは、基本的に、フェイスブックがある国から撤退したり、あるいは単に倒産したり、閉鎖したりすることと、何ら変わりはない。

しかし、双方の行動によっては、より深刻な分裂が起こる可能性がある。ロシアは、フェイスブック、インスタグラム、およびワッツアップ(Whatsapp)を所有するメタを「過激派組織」であると宣言。さらに、欧州評議会(Council of Europe)などの国際統治機構から脱退し、欧州放送連盟(European Broadcasting Union)からは活動停止処分を受けている。このような動きがインターネットを管理する組織で再現されれば、極めて甚大な影響を及ぼすことになるだろう。

こうした動きにより、「スプリンターネット(日本版注:分断されたネットの意。スプリンター(splinter、破片の意)とインターネットを組み合わせた造語)」、またはバルカン化したインターネット(日本版注:ある地域や国家が互いに対立する地域や国家に分裂していくこと)への懸念が高まっている。すなわち、現在の単一のグローバルなインターネットの代わりに、互いにやり取りすることが無く、おそらく互換性もないテクノロジーを使って動作するネットワークが、多数の国や地域で存在することになるのではないか、という懸念である。

そうなれば、世界共通のコミュニケーション・テクノロジーとしてのインターネットは、終わりを告げることになる。それは一時的なことではないかも知れない。中国やイランは現在、たとえ一部のサービスしか利用できないとしても、米国や欧州と同じインターネット・テクノロジーを使用している。そのような国がもし、競合となるガバナンス組織やネットワークを構築した場合、そのネットワークを再構築するには、世界中の主要国が相互に合意するしかない。世界がつながっている時代は終わるだろう。

このような動きはすでに出ている。2月にウクライナ政府は、インターネットのドメイン名システムを管理するICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)に対し、ロシアの同システムへのアクセスを停止するように要請し、事実上、インターネットから「.ru」サイトを排除しようとした。

ICANNはかつて、米国商務省の外郭団体であったが、現在は非政府組織として運営されており、ウクライナ政府の提案を全面的に拒否した。

ICANNのゴーラン・マービー最高経営責任者(CEO)は、「インターネットは非中央集権型システムです。誰かがそれを制御したり、停止させたりすることは …

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