テスラに挑む:産油国ナイジェリア、若きEV起業家の夢
ビジネス・インパクト

This Nigerian EV entrepreneur hopes to go head to head with Tesla テスラに挑む:産油国ナイジェリア、若きEV起業家の夢

アフリカ最大の石油産出国であるナイジェリアのムスタファ・ガジボは大学を3年で中退し、電気自動車(EV)のスタートアップを立ち上げた。太陽光パネルを搭載した同社の電気自動車に、今や、国や自治体も注目している。 by Valentine Benjamin2023.05.01

ナイジェリアの人々は、ガソリンを買うため長い列に並んだり、バスの運賃が乱高下したりすることに慣れっこになっている。 ナイジェリアはアフリカ最大の石油産出国でありながら、住民は安定供給の恩恵を受けられていない。

ムスタファ・ガジボ(30歳)は、この問題の緩和に取り組んでいる。ガジボは北東部の都市マイドゥグリでスタートアップ企業フェニックス・リニューアブルズ(Phoenix Renewables)を創業し、国産の電気自動車産業を立ち上げているのだ。

ガジボは大学3年で中退して同社の経営に乗り出した。最初のプロジェクトは、街中でよく走っている車の内燃機関を、電動機に変えることだった。ガジボは、住民が運賃を支払ってよく利用する2種類の乗り物に注目した。7人乗りのミニバスと、「ケケ」と呼ばれる電動三輪車だ。

フェニックス・リニューアブルズは、1度の充電で150キロメートルの走行が可能な改造電動ミニバスを全部で12台保有している。
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当初は懐疑的な意見もあった。マイドゥグリでは充電インフラが限られているため、電気自動車の普及が進んでいない。「多くの人は、マイドゥグリの街で電動モビリティが実現可能で、商業的に成り立つとは思っていません」とガジボは言う。しかし、ガジボの電動化計画は支持を集めつつある。フェニックス・リニューアブルズは現在、電気ミニバスを全部で12台保有している。1度の充電での走行距離は150キロメートルで、フル充電にかかるコストは約1.5ドルだ。

必要なインフラを構築することは、プロジェクトの成功に不可欠だ。ガジボと共同創業者のサディク・アブバカル・イッサは、市内に60キロワット毎時の太陽光発電充電ステーションを設計し、さらなる増設も見据えている。

そして今、ガジボは内燃機関自動車を改造して、電気自動車をゼロから作り上げることに挑戦している。

2021年に導入した1台目は、地元で調達した多くの材料から作った12人乗りのバスだ。航続距離は212キロメートルで、背面に搭載した太陽光発電システムにより、35分で充電できる。フェニックス・リニューアブルズが資金を負担した最近のテスト走行では、わずか1カ月の間に、マイドゥグリで3万5000人の乗客を輸送した。

マイドゥグリに住む電気建築サービスエンジニアのデボラ・マイダワは、ガジボの電気自動車は地域のニーズを満たす良い移動手段だと考えている。「太陽光パネルを搭載することで、巷に溢れる電気自動車に対して優位性を発揮しています。ガジボの電気自動車はナイジェリア市場に溢れることになると思います」とマイダワは言う。

ガソリンで動くオートマチックトランスミッション乗客用ミニバスは、新品で500万ナイラ(約1万ドル)近くする。ガジボは、自分が作った太陽光発電ができる12人乗りを1台購入しても、同じぐらいの値段になると言う。彼は今後数カ月で、ナイジェリアの8都市に500台を展開する予定であり、今度こそは販売できるようにと願っている。

「当社の製品はかなり購入しやすい価格になっており、車両のコストにはかなり気を配っています」とガジボは言う。「低価格化を実現するには、車両を現地で完全に設計・製造することが唯一の方法です」。

今や、国や自治体も注目している。たとえば2022年初頭、マイドゥグリのあるボルノ州の知事はガジボの功績を称え、2000万ナイラ(約4万5000ドル)の研究開発費と、1万5000平方メートルの工場用地を贈った。ナイジェリア政府は、フェニックス・リニューアブルズが警察や軍隊のために電気自動車パトカーを製造してくれることに興味を示している。

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ガジボの最終目標は、テスラ(Tesla)や他の大きなブランドと競争することだ。「ニューヨーク、ロンドン、ミュンヘンなど、世界中の大都市で私たちの車を走らせたいです」とガジボは言う。

本記事を執筆したヴァレンタイン・ベンジャミンはナイジェリアのトラベルジャーナリスト兼写真家で、ナイジェリアとサブサハラ・アフリカの国際保健(グローバルヘルス)、社会正義、政治、開発について報道している