パリ協定離脱をトランプ大統領が発表、再交渉も検討へ
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Exiting Paris, Trump Cedes Global Leadership on Climate Change パリ協定離脱をトランプ大統領が発表、再交渉も要求

もはや誰も驚かないことだが、トランプ大統領はパリ協定から米国が離脱すると発表した。米国に有利な条件での再交渉も求めている。 by James Temple2017.06.02

予想通り、ドナルド・トランプ大統領は6月1日、「パリ環境協定」から米国が離脱すると発表した。トランプ大統領は、パリ協定が米国の経済成長、雇用創出、国際競争力を弱体化させると強調した。

しかしエネルギーと気候の専門家の多くは、離脱の決定によって主要な同盟国や貿易相手国との関係を損ねるとともに、クリーンエネルギー開発分野でのビジネスチャンスを他国、特に中国に譲ることになると指摘する。MITテクノロジーレビューが以前報じた通りだ(「Exiting Paris Climate Accords Would Exact a Steep Global Cost」参照)。

世界第2位の温室効果ガスの排出国である米国の撤退は、パリ協定を弱体化させることにもなりうる。他の国、特に気候変動の問題にあまり関わっていない発展途上国が協定を見直す可能性があるためだ。

ホワイトハウスのローズガーデンで開かれた午後の記者会見で、トランプ大統領は協定を再交渉するか、「米国の産業、労働者、国民、納税者にとって公平な条件で」新たな協定を締結するつもりだと述べた。具体的には、貧困国のクリーンエネルギー転換を支援する「緑の気候基金」へ数十億ドルの追加拠出をしない方針だと説明した。

多くの米国のリーダーは即座に今回の決断を批判し、トランプ大統領の主張する経済的な根拠に異を唱えた。

「パリ協定に残る国こそ、雇用や産業の創出の恩恵を受ける国になるだろう」。困難を乗り越えてパリ協定に署名したバラク・オバマ前大統領は、声明の中でこう述べた。「しかし、たとえ米国のリーダーシップがなくても、トランプ政権が未来を拒絶する一握りの国々に加わったとしても、米国の州や都市、企業は一歩を踏み出し、率先してより良い未来を作っていけると確信している」。

テスラのイーロン・マスクCEOは、今回の決定によってトランプ政権の経済諮問委員を辞任するとツイートした。「気候変動は事実です。パリ協定からの離脱は米国にとっても、世界にとっても良くありません」。

米国は2025年までに温室効果ガス排出量を2005年比で28%削減することに同意していた。

発表では、米国がパリ協定から完全に離脱するのに3年かかるとされているが、トランプ政権はパリ協定に法的拘束力はないとして、すでに政策の見直しと新たな予算案の作成を進めている(参照「トランプ政権は 厳然たる気候変動の事実も 無視するのか?」)。