CRISPRに新たなリスク、夢の遺伝子療法に暗雲

Cancer link casts pall over CRISPR CRISPRに新たなリスク、夢の遺伝子療法に暗雲

クリスパー(CRISPR)が、がんを引き起こす可能性が複数の論文で示されたことで、 遺伝子編集企業ビッグ3の株価が暴落した。 エディタス・メディシン(Editas Medicine)、クリスパー・セラピューティクス(CRISPR Therapeutics)、インテリア・セラピューティクス(Intellia Therapeutics)の株価が10%以上下落したのだ。 by Antonio Regalado2018.06.12

クリスパー(CRISPR)が、がんを引き起こす可能性が複数の論文で示されたことで、 遺伝子編集企業ビッグ3の株価が暴落した。 エディタス・メディシン(Editas Medicine)、クリスパー・セラピューティクス(CRISPR Therapeutics)、インテリア・セラピューティクス(Intellia Therapeutics)の株価が10%以上下落したのだ。

クリスパーはDNAを切断する。これが細胞にとってはあまり良くないことが明らかになった。 学術誌 『ネイチャー メディシン(Nature Medicine)』に掲載された2つの論文(「CRISPR–Cas9 genome editing induces a p53-mediated DNA damage response」「p53 inhibits CRISPR–Cas9 engineering in human pluripotent stem cells」)によると、クリスパーによって受けた損傷が、細胞を殺したり、増殖を止めたりする可能性があることが分かった。

問題なのは、クリスパーが「p53」遺伝子に欠陥がある細胞を殺す可能性は極めて低そうだということだ。p53は、そのがん抑制機能ゆえに「ゲノムの守護者」とも呼ばれる。つまりクリスパーは、がんになる可能性の高い細胞に対して生存優位性を与えてしまう可能性がある、と医科学メディアのスタット(Stat)は指摘している。

今回の新たな発見が、 米国食品医薬品局(FDA)が5月に、 クリスパー・セラピューティクスが予定していた治験を保留した理由のヒントになるかもしれない。 クリスパー・セラピューティクスは鎌状赤血球症を治療するための遺伝子療法として、クリスパーを使用する予定だった。