2050年までに温室効果ガス「実質ゼロ」、BPの宣言は野心的か?
持続可能エネルギー

BP has announced a “net zero” emissions plan 2050年までに温室効果ガス「実質ゼロ」、BPの宣言は野心的か?

石油およびガス産業において温室効果ガス排出削減計画を打ち出す企業が増えている。英石油大手のBPは2月、同社の事業全体における二酸化炭素排出量を2050年までに「実質ゼロ」にする計画を打ち出した。 by James Temple2020.03.10

投資家や政治家からの圧力、気候変動に関する一般からの懸念、あるいは業界に対する経済的リスクの高まりを受け、温室効果ガス排出削減計画を打ち出す石油およびガス企業が増えている。

この最新の動きとして挙げられるのが、BPが2月12日に発表した「野望」だ。発表によると、2050年までに、同社が採掘する石油およびガスから直接排出される温室効果ガスに加えて、同社の事業によって排出される温室効果ガス排出をなくすという。すなわち、年間4億トンを超える二酸化炭素排出量の削減を意味する。

「当社が採掘する際に地中から発生するすべての二酸化炭素に直接的に対処します」。就任したばかりのバーナード・ルーニーCEO(最高経営責任者)は声明でそう述べた。

BPは9月に詳細な計画を公表するとしているが、記者会見をしたルーニーCEOによると、同社はこれに伴い、化石燃料の生産を徐々に減少させていくことになるという。

こうした目標の達成には、クリーンエネルギー源への大々的な転換と、植樹などをはじめとする空気中からの二酸化炭素回収が必要となる。2050年におけるBPの石油およびガス製品の利用者は、発電所や工場、車両から発生する温室効果ガス回収装置の設置が必須になるだろう。

風力、太陽光、バイオ燃料といった再生可能エネルギーは、現在、BPの事業や投資のほんの一部を占めているに過ぎない。

それでもこの計画にはまだ、排出ギャップがある。BPは、他社が生産し、同社が購入、処理、再販する石油やガスについては「二酸化炭素排出原単位」の半減に努めるという(二酸化炭素原単位は、エネルギー単位あたりの排出量レベルを示す)。

ブルームバーグが指摘するように、現段階でBPよりも高い二酸化炭素排出削減目標を掲げている主要な石油およびガス企業はレプソル(Repsol)だけだ。昨年12月、スペインの企業であるレプソルは、2050年までに同社製品を利用する顧客からの排出も含め、完全な脱二酸化炭素を計画していると発表した。

比較対象として、ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)は同社製品の二酸化炭素排出原単位を2035年までに20%、2050年までに50%削減すると発表している。フランスのトタル(Total)は、2025年までに同社の事業およびエネルギー使用において最低でも600万トンの二酸化炭素排出を削減する計画を発表している

その他のBPの計画には、石油およびガス以外への投資の強化、イノベーションや低炭素エネルギーなどに焦点を当てた新規事業部門の立ち上げ、強力な温室効果ガスであるメタンの漏出を検知するモニターの採掘現場への設置などが盛り込まれている(BPは、ほとんどがメタンで構成されている天然ガスの世界最大級の生産企業の1つである)。

だが究極的に言えば、危機的なレベルの気候変動を回避するためには、エネルギー産業はこれよりも遥かに速いペースで二酸化炭素の排出量を削減する必要がある。

 国際環境NGOであるカーボントラッカー(Carbon Tracker)の昨年11月の分析によると、パリ環境協定の中心目標である世界全体における2℃の温暖化防止を達成するには、主要な石油およびガス生産企業が2040年までに35%の排出削減を達成する必要があることがわかった(85%という試算もある)。それにもかかわらず、石油・ガス産業は新たな化石燃料の採掘に向けて数千億ドルの投資を続けている。