米司法省がグーグルを独禁法違反で提訴、その中身とは?
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The DoJ says Google monopolizes search. Here’s how. 米司法省がグーグルを独禁法違反で提訴、その中身とは?

グーグルが、米司法省から反トラスト法違反として提訴された。約20年ぶりの大型提訴となるその中身とは。 by Eileen Guo2020.10.24

10月20日、米司法省と共和党勢力が強い11州の司法長官は、グーグルを反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反で提訴した。同社がインターネットにおける検索と検索連動型広告を違法に独占し、維持していると強く主張している。

提訴前、16カ月におよぶ調査がされている間、グーグルには保守派に対するバイアスがあるという根拠のない疑惑が声高に叫ばれ、トランプ大統領は巨大テック企業の責任を問うと繰り返し約束してきた。しかし、複数の報道によると、司法省はウィリアム・バー司法長官から、大統領選挙の2週間前には提訴するよう圧力をかけられていた。

とはいえ、巨大テック企業を規制するという考え方自体に党派性は関係ない。10月初めには、下院民主党が449ページに及ぶ報告書を発表し、アップル、アマゾン、フェイスブック、グーグルによる独占的な仕組みをすべて調査し、これらの企業に対し反トラスト法執行の議論を強化するよう主張した。ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官は、自身の州を含む7つの州も間もなく独自に提訴する予定だとし、その後、司法省の提訴に加わる可能性もあることを示唆していた。

焦点となるのは、グーグルの戦術と検索における市場支配だ。グーグルは現在、米国内の全検索クエリの80%を占めており、米司法省は、グーグルが検索連動型広告から得られる年間数百億ドルという利益を利用して、競争を不当に抑制している主張する。

米司法省が主張しているグーグルの違法性の中身を以下に説明する。

グーグル検索をデフォルトとする

訴状によると、グーグルは数十億ドル相当の排他的契約によって、Webブラウザーやモバイル端末、さらには音声アシスタントやIoT機器といった新しいデバイスにおいても自社の検索テクノロジーをデフォルト(規定値)設定とすることで、その優位性を維持している。デフォルト設定を変更するユーザーはあまりいないことから、結果として「グーグルは事実上、独占的な一般的検索エンジンとなっています 」とする。

特にモバイル端末におけるグーグルの振る舞いについて、訴状は具体的に取り上げている。同社のアンドロイド(Android)オペレーティング・システムは無料でオープン・ソースだが、実際にはグーグルによるコントロールが維持されていると指摘している。ベンダーは契約によって、アンドロイドOSを元にした別のOSの開発を妨げられており、グーグル・アプリのプリインストールが強制されるほか、グーグルの方針に従う企業に対する有利な収益分配が契約に含まれている。

また、グーグルはアップルとも収益分配契約を結んでおり、アップルはグーグルから年間80億ドルから120億ドル相当を受け取っているという。これはアップルの全世界の純利益の最大20%に相当する。この契約により、グーグル検索はWebブラウザーのサファリ(Safari)やアイフォーン(iPhone)だけでなく、アップル製品のシステム内検索機能であるシリ(Siri)やスポットライト(Spotlight)でも、デフォルトの検索エンジンという地位を確保し続けている。

排他的な契約は、米国内の検索クエリの60%近くをカバーしているという。

市場参入の高い障壁

グーグルの優位性は、競合する検索エンジンの構築に法外なコストがかかることで守られている。グーグルは、米国の一般的検索エンジン企業でWebクローラー(公開されているWebページを常に検索してインデックスを作成するソフトウェア)を使っている3社のうちの1社だ。グーグル以外では、ビング(Bing:マイクロソフト)とダックダックゴー(DuckDuckGo)の2つしかない(検索市場の3%を占める米国のヤフー検索は、実際にはビングから検索結果を購入している)。

このような検索インデックスの作成と維持をするWebクローラーには、訴状によると「数十億ドル相当の先行投資」が必要だ。そのほかにも年間数億ドルの維持費が必要とされ、小規模な競合他社の検索市場参入は事実上、排除されている。

グーグルによる検索の独占は、同社がほかよりも優れた検索エンジンを維持する能力の強化にも役立っていると訴状は主張している。グーグルは収集するデータ量に優位性があり、より大きなデータセットを使用して、より正確なアルゴリズムを作成でき、その結果、個々のユーザーをターゲットにした、より良い検索結果を生み出せる。司法省によると、この循環によってグーグルの検索市場における優位性は強化され、同社は競争から不当に保護されているという。

広告の独占

米司法省は、グーグルはオンライン検索連動型広告も独占している、と主張している。検索の独占状態によって広告主に潜在的なオーディエンスへのアクセスを最大量で提供できることから、広告主にとっては他の検索エンジンよりもずっと魅力的な選択となる。訴状では、検索結果で表示される検索連動型広告の一種であるリスティング広告のテキストや、ショッピング広告としての誘引性についての具体例を挙げており、そのどちらもオーガニック検索(広告枠を含まない検索エンジンによる自然な検索)の検索結果より目立つ位置に表示される。

検索連動型広告の業界規模は500億ドルにまで膨らみ、そのうち広告主がグーグルに支払っている金額は年間約400億ドルにも上る。

司法省は何を求めているのか

こうした疑惑にもかかわらず、司法省はグーグルの解体や特定の罰金を科すことを明示的に意図していない。むしろ「反競争的な弊害を取り除くために必要な構造的救済」を求めている。記者会見で、司法省は、他のテック企業に対しても調査が進行中だと言及したほか、グーグルをさらに告発する可能性も否定しなかった。

提訴から数時間後、グーグルは自社ブログに投稿した声明文の中で、提訴には「重大な欠陥があります」と反論した。

「人々がグーグルを利用するのは、自らグーグルを選んでいるからです。強制されているからでも、グーグルの代わりが見つからないからでもありません」と声明文の中で述べている。「この提訴は、なんら消費者の助けにはなりません。それどころか、低品質な代替品に不自然な肩入れし、携帯電話の料金を引き上げ、消費者が使いたい検索サービスを利用しにくくするでしょう」。

グーグルが米規制当局の精緻な調査に直面したのは、今に始まったことではなく、おそらくこれが最後でもないだろう。2012年、米国連邦取引委員会(FTC)はグーグルを調査したが、最終的には提訴を見送っている。一方、欧州では、グーグルは2010年以来、個別に3回、反トラスト法違反による提訴の対象となっており、90億ドルの罰金を命じられている。

次に何が起こるのか? 司法省の提訴そのものは、法廷での決着までに何年もかかるだろう。1970年代のIBMに対する提訴では裁判が終わるまでに13年、1997年のマイクロソフトに対する提訴では決着までに5年かかった。そしてどちらの提訴においても、両社ともに強制的に解体されたわけではない。