ウクライナ軍、対ロシア軍資金確保にクラウド・ファンディングも活用
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Ukraine is turning to online crypto crowdfunding to fund its fight against Russia ウクライナ軍、対ロシア軍資金確保にクラウド・ファンディングも活用

ロシアとの戦いに必要な軍資金を調達するため、ウクライナ軍を支援する組織は、ネット上で暗号通貨を使ったクラウド・ファンディングを活用している。ただ、課題も多い。 by Tanya Basu2022.02.28

ウクライナへの電撃的なロシアの侵攻は世界を驚かせた。ロシアがここまですばやく動けた理由には、不意を衝くタイミングだけでなく、両国間の軍事資源の圧倒的な格差が挙げられる。ストックホルム国際平和研究所によると、ウクライナの国防費は60億ドルであり、ロシアの国防費のわずか10%に過ぎない。

一刻も早く現金を調達する必要があるウクライナ陣営は、軍備を購入するためにクラウド・ファンディングに頼り始めている。米国のクラウド・ファンディング・プラットフォームである「ゴー・ファンド・ミー(GoFundMe)」では、困窮するウクライナ人への資金援助を謳うページが無数に掲載されている。ウクライナ軍を支援する現地のカムバック・アライブ(Come Back Alive)財団のWebサイトは2月22日、暗号通貨で400万ドル相当の膨大な額を集めることに成功した。中には、一口300万ドルにも上る匿名の寄付もあったという。

軍事に特化したクラウド・ファンディングは、ウクライナにとっては初めての取り組みではない。暗号通貨を使ったこともある。2014年にロシアがクリミアを併合した際には、ウクライナ軍およびウクライナの非公式の抵抗勢力に対し、クラウド・ファンディングを通じて医療物資や軍事品を購入するための資金が提供された。政府が提供する武器を手に、ウクライナ軍と共に戦うことを志願した民間人もいる。

カムバック・アライブ財団は現在、ウクライナ軍を支援しているグループの中で最大かつもっとも影響力のある集団だ。同財団は2014年、キエフを拠点とするボランティアのヴィタリ・デイネガによって設立された。デイネガは、ロシアのクリミア併合の直後、ウクライナのドンバス地方で戦闘をする兵士に対して資金や防弾チョッキを提供する活動を開始した。財団の名前は、デイネガが防弾チョッキの一つひとつに「カムバック・アライブ(生きて帰ってこい)」と記したことにちなんでいる。カムバック・アライブの活動はウクライナ政府の支援を受けており、政府は「ウクライナの中心的なチャリティ基金」に同財団を位置づけている。寄付希望者は、米国と英国のチェース銀行を経由して、ウクライナ国立銀行の「特別口座」への送金も可能だ。

ところが2月24日、カムバック・アライブ財団は大きな後退を余儀なくされた。主な国際的な資金源だったクラウド・ファンディング・プラットフォームの「パトレオン(Patreon)」から、利用停止の処分を受けたのだ。米国東部時間の2月25日午後1時時点で同アカウントは利用できない状態となっている。

パトレオンの広報担当者は「有害または違法な活動」を禁止する同社の方針を引き合いに出し、今回の措置の正当性を主張した。「パトレオンは、いかなる目的からであろうと、暴力行為や軍事品の購入に関与しているキャンペーンを禁止しています。同社が調査している間、当該のキャンペーンを停止する決定をしました」。

ウクライナ人はすぐに反発した。パトレオンの決定は、ロシアから自国を防衛する上で必要不可欠な生命線を断ち切ることになるという。カムバック・アライブのページはすでに何年も運用されているにも関わらず、このタイミングでの処分に対しても疑問の声も上がっている。

今回の紛争において、クラウド・ファンディングの多くはパトレオンを通じている。現地の英語報道メディアであるキエフ・インディペンデント(Kyiv Independent)など、他のウクライナの既成組織もパトレオン上で資金を集めている。ゴー・ファンド・ミーは自社のプラットフォーム上で実施されているウクライナ関連のクラウド・ファンディングについて、今のところ声明を発表していない。

膨大な額の現金を集めて送金できるプラットフォームの影響力は絶大だ。だが、特に不確定要素が多い戦争という状況では、誰が資金を提供し、誰が受け取っているのかを知ることは必ずしも容易ではない。すでにインターネット上では、ウクライナ関連の詐欺があふれている。例えば、あるツイッター上のアカウントは以前は賭博のために使用されていたが、現在はロシアとの戦いに資金援助をするとの名目でビットコインのリンクを共有している。