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週1回の注射で痩せる
「驚異の減量薬」
ブームに潜む危険
Andrea Daquino
人間とテクノロジー Insider Online限定
Weight-loss injections have taken over the internet. But what does this mean for people IRL?

週1回の注射で痩せる
「驚異の減量薬」
ブームに潜む危険

週に1回の注射で体重が減るという「痩せ薬」が米国で人気になっている。ティックトックなどネット上ではインフルエンサーによる誇大広告もまん延しているが、副作用はあまり知られておらず、長期的な影響はまだ明らかになっていない。 by Amelia Tait2023.08.14

マイケル・エデンフィールドの主治医は、彼を「驚異の減量男」と呼ぶ。

この49歳の航空会社勤務の男性は、2021年の感謝祭から2022年のクリスマスまでの間に、約59キログラムの減量に成功した。脂肪の減少に伴って、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:経鼻的持続陽圧呼吸療法)の装置、高血圧の薬、さらには足のむくみを取るための利尿剤も要らなくなった。これは、エデンフィールドが現在処方されている唯一の薬、「ウゴービ(Wegovy)」の効果だ。彼はこの肥満症治療薬を週に一度、自分自身で腹部に皮下注射している。

エデンフィールドの成功体験は、レディット(Reddit)のダイエット注射関連フォーラムの投稿の中で一番よく読まれている。コメント欄には、見た目が「何十年も若返った」、「とても感銘を受けた」といった好意的な意見が書き込まれている。しかし、インターネットのどこを探しても、エデンフィールドの姉で54歳のレストラン・オーナー、メリッサ・ホールの体験談は見当たらない。

2022年10月、ホールは肥満症治療効果を狙って適応外処方された糖尿病治療に向けた注射薬「マンジャロ(Mounjaro)」の皮下注射を始めた。1カ月半で12キロの減量に成功したが、週1回の注射の6回目を終えた後、「お腹の中にある何かが真ん中から裂けるような感覚」に襲われ、目が覚めた。ホールは急性膵炎と診断され、「刺すような痛み」が1週間続いた。現在は回復しているが、主治医はマンジャロの再処方を拒んでいる(ウゴービやマンジャロには膵炎の副作用があることが知られている)。

「驚異の減量男」とその姉は同じ家族の中で、現在ブームの肥満症治療注射薬を使った結果、真逆の体験をしたわけだ。

ウゴービやマンジャロは、オゼンピック(Ozempic)、ビクトーザ(Victoza)、サクセンダ(Saxenda)といった比較的新しい医薬品と並んで、2022年にその名を広く知られるようになった。上記の薬はすべてGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA:Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonist)であり、食後に分泌されて満腹感をもたらすホルモン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の働きを真似ている。エデンフィールドは、ウゴービのために食事が以前ほど楽しくなくなったと言い、ホールは、マンジャロが「食欲をすべて奪い去った」と言う。「ほとんど何も食べていませんでした。素晴らしいことでした」。

ここ1年ほど、いわゆる「奇跡」の肥満症治療注射薬がインターネット上で大ブームだ。有名人が肥満症治療注射薬を肯定したり否定したりするたびにニュースになる。ちなみにイーロン・マスクは肯定派、クロエ・カーダシアンは否定派だ。しかし、肥満症治療注射薬を有名にした要因としては、SNSや掲示板の方が大きいだろう。そこでは、一般人や、投稿をバズらせたいインフルエンサーが、肥満症治療注射薬に関する投稿を拡散させていた。ティックトック(TikTok)では、「#Ozempic(オゼンピック)」のハッシュタグが付いた動画が6億回も再生されている。フェイスブックでは、肥満症治療注射薬を支持する人々のグループのメンバー数が数万人に達している。さまざまなソーシャル・メディアで、インフルエンサーたちが肥満症治療注射薬のノーブランド製剤を提供するヘルスケアサービスを宣伝し、一部の肥満症専門医はこうしたサービスに対して警告を発している。

ある薬がインターネット上でブームになれば、当然、世界中で話題になる。「20代、30代、40代の人たちが、インターネットで見た、減量効果のある注射に興味を示しています」と、ジョージタウン大学医学部の助教授で家庭医でもある、ラターシャ・パーキンスは言う。パーキンス助教授は、2022年の冬以降、肥満症治療注射薬に関する問い合わせが徐々に増えてきたと感じている。「昨年の今頃は、肥満症治療注射薬が話題になることはありませんでした」。今では、患者がパーキンス助教授の元を訪れ、オゼンピックについて尋ねてくるようになっている。

しかし、肥満症治療注射薬を求める人がみな、医師の元を訪れるわけではない。2022年の間に肥満症治療注射薬の需要が高まり、世界的に品不足に陥った。その結果、海外から密輸入したり、処方箋なしで隠れて購入するなど、肥満症治療注射薬を非合法に入手しようとする人たちが現れた。

誇大広告やハッシュタグは、すべてを教えているだろうか? 奇跡の薬がもたらす身体的、社会的、心理的な副作用には何があるのか? そして、これらの宣伝すべてが、絶対にすべきでないことを人々にさせてしまう可能性はないのだろうか?

良い副作用、悪い副作用

当初、体重減少はただの副作用だった。GLP-1受容体作動薬は、GLP-1ホルモンを真似た作用でインスリンの分泌を促す、2型糖尿病の治療薬として開発された。2005年、米国食品医薬局(FDA:Food and Drug Administration)は、GLP-1受容体作動薬としては初めて、2型糖尿病治療薬として「エキセナチド(Exenatide)」を承認した。その後2000年代の終わりまでに、さらに多くのGLP-1受容体作動薬が市場に出回るようになった。患者はすぐに、この薬が2型糖尿病に効くだけでなく、体重を減らす効果もあることに気づいた。

オゼンピックとウゴービはいずれも、GLP-1受容体作動薬「セマグルチド(Semaglutide)」の商品名であり、デンマークの製薬大手ノボ ノルディスクが開発したものだ。どちらの薬も有効成分は同じが、適応症、投与量、処方情報、投与スケジュール、使用する注射器が異なる。2017年、オゼンピックは糖尿病治療薬として承認されたが、ほどなくして医師たちは、過体重の患者に適応外で処方するようになった。その後、ノボ ノルディスクは、減量に特化したウゴービを開発した。ウゴービは2021年6月に、2014年以来久々の慢性肥満治療薬として、FDAに承認された。

その後、2022年5月にFDAはマンジャロを2型糖尿病治療薬として承認し、有効成分であるチルゼパチド(Tirzepatide)を、肥満治療薬として「優先審査」の対象に指定した。チルゼパチドの開発元であるイーライリリーの広報担当者は、「現在、チルゼパチドは成人の2型糖尿病患者の血糖コントロール用途でのみ承認を受けており、イーライリリーは『FDAが承認した適応症以外の症例に対して使用することを促進、奨励するつもりはない』」と述べている。にもかかわらず、この薬の発売以来、医師たちは減量効果を狙って適応外処方を続けており、「Mounjaro Weight Loss Success(マンジャロ減量成功)」というフェイスブックのグループには、10万人近いメンバーがいる。

臨床試験により、チルゼパチドを投与した患者は72週間で体重が少なくとも20%減少し、ウゴービを投与した過体重の成人は68週間で体重が平均15%減少することが明らかになった。

エデンフィールドは、ウゴービの成功例の1つと言える。新型コロナウイルス感染症が大流行している最中、仕事ができず、家に閉じこもって「健康に良くないものを大量に食べていた」という。エデンフィールドの食生活はまるでティーンエイジャーのようで、サンドイッチ、チーズ・ステーキ、ハンバーガーといったファーストフードを日常的に食べ、コカ・コーラに「深刻に依存していた」という。体重がおよそ162キログラム(身長は190センチメートル)まで増えたとき、雇用主が費用を負担してくれるというので、スリーブ状胃切除術を受けようと考えた。しかし、エデンフィールドを診察した医師は、代わりにオゼンピックを勧めた。この薬を服用し始めた最初の1カ月でおよそ7キログラムも体重が落ち、2022年2月にウゴービに切り替えた。現在の体重は103キログラムほどだ。

「生活のあらゆる面が変わりました」とエデンフィールドは言う。もう空腹感に「支配される」ことはなく、通勤で息切れすることもない。「まるで20代に戻ったかのような気分です」。

結果は誰もがうらやむところだが、肥満症治療薬を注射する日々の現実は、楽しいことばかりではない。よくある副作用として、吐き気、下痢、便秘といった消化器系の症状が挙げられる。エデンフィールドは、「猛烈な」吐き気を緩和する方法をレディットに求めた。この1年で、セマグルチドに関するサブレディットが何件も立てられ、急速に伸びている。エデンフィールドが投稿したサブレディットは2021年に立てられたもので、現在のメンバー数はおよそ2万2000人だ。一方、肥満症治療注射薬のブームを受けて、フェイスブックのグループも数え切れないほど作られてきた。ここでは、嘔吐、頭痛、疲労、「硫黄臭いゲップ」、脱毛などの症状が報告されているが、大半の人は、減量の代償ならば大したことではないと感じているようだ。

68週間続いたウゴービの治験では、参加者の4.5%が消化器症状のために治療を中止した。ノボ ノルディスクの主任科学顧問であるペーター・クルツハルスによれば、このような副作用は通常、患者が薬剤に対する耐性を身に付けるにつれて徐々に和らいでいくという。同社の広報担当者は、ウゴービの投与を受けて吐き気を催した患者は「医療機関に連絡し、対処法について指示を受けるべき」と付け加えている。

しかし、副作用はもっと深刻になることもある。GLP-1受容体作動薬の投与を受けた患者の中に、致死的膵炎を起こした患者と、非致死的膵炎を起こした患者が見つかっている。GLP-1受容体作動薬は膵臓細胞に作用してインスリン産生量を増加させる。そして一部の科学者の理論によると、GLP-1受容体作動薬は膵臓細胞の過剰増殖を引き起こす可能性がある。ただしこちらの話については、複数の研究で矛盾する結果が出ている。肥満患者2245人を対象とした2021年の研究では、2.2%の患者が急性膵炎を発症し、2型糖尿病、喫煙歴、慢性腎臓病の既往が副作用のリスクを高めることがわかった。ノボ ノルディスクの広報担当者は、「自社製品のベネフィット・リスク評価に依然自信を持っており、患者の安全確保に引き続き取り組んでいく」と述べている。

ウゴービとマンジャロの処方情報には、「膵炎が疑われる場合は、速やかに服用を中止すること」との警告が記されている。しかし、すべての患者が警告に耳を傾けるわけではない。

リスクを取る

肥満症治療薬に伴う危険な副作用は、今に始まったことではない。しかし危険な副作用が、この種の薬を求める人々を思いとどまらせるとは限らない。

ローレン・ルフェーヴルは自分のことを、「あらゆる肥満症治療薬の申し子」と呼ぶ。1981年の夏、わずか14歳の時に彼女は、フェニルプロパノールアミン(PPA:phenylpropanolamine)含有の食欲抑制剤(飲み薬)、「デキサトリム(Dexatrim) …

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