ペロブスカイト系太陽光発電の実用化に巨大な一歩
持続可能エネルギー

A New Way of Looking at Solar Cells ペロブスカイト系太陽光発電
エネルギー効率31%を達成

ペロブスカイト系太陽光発電がシリコン系を上回る効率を達成できそうだ。 by Richard Martin2016.07.09
最先端の画像テクノロジーは、ペロブスカイト太陽電池の、微量で、切子面のある粒からなる、でこぼこの表面を映し出した

非常に低価格で高効率な太陽電池の土台として、ペロブスカイト(灰チタン石)の潜在的性能を活かす大きな一歩が、今週、ローレンス・バークレー国立研究所のチームの発表で明らかになった。アレクサンダー・ウェーバー=バルジオーニ主任研究員は、ペロブスカイトは切子面の微細な粒で構成されており、ダイアモンドと違って巨大な炭素分子構造ではない、と説明する。研究チームが発見したのは、独特の結晶構造を持つ素材の表面で、隣接する切子面より、電流の生成がずっと効率的な、性能が著しく異なる部分があることだ。

この研究結果は、有益な切子面を最適化すれば、効率を高めた太陽電池が作れることを示している。量産型のシリコン系太陽電池は、太陽光エネルギーの17~20%を電気に変換できるが、バークレー研究所のグループによって研究された切子面の中には、ペロブスカイト太陽電池の理論上の限界効率である約31%を示した場合もあった。(現在開発中のペロブスカイト系太陽電池の効率は約20%)

研究内容はNature Energy誌が掲載した論文で解説された。もともとこの研究はワシントン大学で化学を研究しているデイビッド・ジンジャー教授の画像処理が発端だ。ペロブスカイト結晶の方向を慎重に制御できれば、Nature Energy誌の論文に添えられたジンジャー教授の記事にあるように「ペロブスカイトがその理論上究極の性能限界に(中略)近づけるかもしれない」のだ。

当面の課題は、太陽電池全体の効率を高めるために、実際に、望ましい切子面を持ったペロブスカイトの太陽電池をすべて平行に揃えることだ。

「究極の質問は、ペロブスカイト結晶の成長をどう制御するかだが、簡単ではない」(カリフォルニア大学ロサンゼルス校・材質科学工学部のヤン・ヤン教授)

製造技術はオックスフォード大学ヘンリー・スナイス研究所コロラド州ゴールデンの再生可能エネルギー研究所 (“Promising New Solar Material Boosts Performance of Silicon”参照)など、複数の研究機関で研究されており、少なくとも現時点では、研究者が暗中模索しているわけではない。

「今までは試行錯誤によって進めてきたが、今では何を最適化すべきかはわかっている」(ウェーバー=バルジオーニ主任研究員)