伝染病の感染は、常に明確なパターンに従っている。アウトブレイクは、特定の場所で特定の時刻に始まり、感染源から波状に遠くへと広がっていく。
広がる波の速度は、移動の手段によって決まる。歴史上の記録によれば、黒死病(ペスト)は1日あたり約2kmの速度でヨーロッパ中に広がったという。14世紀に3500万〜2億人の命を奪った特に感染性の高い腺ペストの拡散は、当時利用可能だった輸送手段の制約を受けていた。
しかし、20世紀に入って変化が起こった。波のような広がり方は、一見消え去ったかのようにみえた。航空機により、病気が急にある大陸から別の大陸に移動できるようになったせいである。しかし、ネットワークの理論家が、移動の速度を考慮すれば、波のように広がる性質を復元できることを発見した。拡散を正規化することによって、波状の拡散パターンが再出現するのだ。
社会現象である歌、つぶやき、映像なども、同様に広がっていると考えられる。ソーシャル・ネットワークを通して人から人へと伝わる社会現象は、波状に広がるパターンに従うはずだ。
しかし、このパターンを観察することは難しい。なぜなら、情報の地理的な拡散の仕方は、情報が広がっていくソーシャル・メディア・ネットワークによって歪められているからである。そこで、ソーシャル・メディア・ネットワーク上での情報の広がり方が本当に波状なのか、あるいは根本的に異なるのかという問題が提起される。
この難問の解決を試みるネットワーク科学者は、特定の情報が測定可能な方法で世界中に広がっている象徴的な例を、血まなこになって探している。
ハンガリーのブダペストにあるエトヴェシュ(Eotvos)大学のズソフィア・カラス博士と同僚たちは、まさにそうした例として、2012年に韓国のミュージシャンであるサイ(Psy)の「江南スタイル」の映 …