「クールな場所」に熱視線、北欧のデータセンター大国アイスランドが抱える課題
持続可能エネルギー

Iceland’s data centers are booming—here’s why that’s a problem 「クールな場所」に熱視線
北欧のデータセンター大国
アイスランドが抱える課題

人口35万人の北欧の小国・アイスランドで、大規模データセンターの建設が相次いでいる。寒冷な気候を利用することで冷却費用を抑えられると同時に、電気料金が安く、再生可能エネルギーを利用できるからだ。だが、急成長に伴う課題も浮上している。 by Tryggvi Adalbjornsson2019.06.21

アイスランドの南西端に、レイキャネース半島と呼ばれる不毛の火山半島がある。ケプラヴィークとニャルズヴィークという2つの地区で構成された都市に約1万9000人が居住し、アイスランド最大の国際空港がある。

この都市の外れに、IT企業であるアドバニア(Advania)が所有する施設がある。オリンピック規格のプールとほぼ同じ大きさの金属サイディングの建物は、3年前まで3棟しかなかった。だが、2018年4月に8棟になり、現在は10棟が建ち並ぶ。さらに、11棟目の基礎工事も完了している。

急増の一因は、アイスランド人なら普通はありがたがることはない、同地の気候にある。

北大西洋の孤島であるアイスランドの天候は極端に凍えるようなことはあまりないが、寒く、霧に覆われ、風が強い。首都レイキャビークの年間平均気温は約5°Cで、夏になっても20℃を超えることはめったにない。こうした気候はビーチでの日光浴向けではないかもしれないが、ある特定の産業にとって非常に有利なことにアイスランドは気がついた。データ産業である。

レイキャネース半島に建ち並ぶアドバニアの建物は、大規模データセンターだ。何千台ものコンピューターが常時稼働して、プログラムの処理やデータ送信、そしてビットコインの採掘をしている。こうしたデータセンターでは大量の熱が発生し、24時間体制での冷却が必要となる。そして、冷却には通常、かなりのエネルギーが必要になる。しかしアイスランドのデータセンターでは、温度を下げるために高出力の冷却システムを常時稼働させる必要はない。代わりに、亜寒帯の冷たい空気をデータセンターの中に取り込めばいい。このような自然冷却により、データセンターのランニングコストを削減できる。

データ需要が高まり、急成長

その結果、大手3社が市場を支配するアイスランドのデータセンター産業は、ここ数年で急成長を遂げた。アドバニアは主にビットコイン採掘者にスペースを貸し出している。2012年創業のヴァーン・グローバル(Verne Global)は、BMWのような企業顧客のスーパーコンピューティングのニーズを満たす。BMWは主に衝突シミュレーションなどの複雑な計算にヴァーン・グローバルの処理能力を使用している。最後のエティックス・ エヴリウェア・ ボレアリス(Etix Everywhere Borealis)は、ブロックチェーン・テクノロジーを使用する顧客にも、スーパーコンピューティングを使用する顧客にもサービスを提供しているという。

急速に進む施設の建設だけではない。エネルギー消費量などの他の指標もデータ産業の成長を裏付けている。データセンターは大量のエネルギーを消費する。昨年のアイスランドの大規模データセンターによる電力使用量は2倍以上に増加した。2019年には、さらに50%近く増加すると見込まれている。

別の評価指標もある。データ産業はすでにアイスランド経済の大きな部分を占めている。コンサルティ …

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