人類はワクチンをどう捉えてきたか?テクノロジーレビュー誌面から
生命の再定義

From the archives 人類はワクチンをどう捉えてきたか?テクノロジーレビュー誌面から

これまでの数十年間、ワクチンの開発は重要なマイルストーンだった。だからこそ、新型コロナウイルス・ワクチンが1年以内に複数生み出されたことは驚きに値する。過去のMITテクノロジーレビュー誌面に掲載された、ワクチン関連の記事を紹介する。 by Katie McLean2021.03.16

「国の潜在的能力(The Potential of Nations)」(1961年12月号)
国の潜在的能力は、原材料や消費財を生産する能力、人々の安全を確保し維持する能力、国民を内外の敵から守る能力だけではない。科学と芸術の振興が国のミッションの一部だとしたら、国家は文化的な将来性も持つ。

西欧諸国では、新しい素粒子の発見は国の功績と見なされる。ポリオワクチンの発見は、物理学や化学のどのような発見よりも国の功績として称えられてきた。人類学者が将来、「米国人の生き方」について研究するとき、恐らく医学研究に携わる研究者の社会的名声が、他のいかなる研究者、エンターテイナー、スポーツ界のヒーローをも上回ることに気づくはずだ。


「政府はワクチンを作るべきか?(Should the Government Make Vaccines?)」(1992年1月号)
迫り来る健康危機への懸念が、政策立案者を国内のワクチンの必要性に目を向けるよう促している。解決策の一つは、企業が生産するにはリスクが高すぎるか、収益性が低すぎるワクチンの開発と配布を監督する、国家ワクチン機構(National Vaccine Authority)が民間のワクチン生産を補うことだ。

以前からこのアイデアは提案されているが、業界の反対で実現できなかった。だが、9.11で議論の風向きが変わった。「炭疽菌テロ事件は、テロとの闘いにおいて重要なワクチン開発と生産の弱点がはっきりと示されたのと同時に、民間部門にとって重要なワクチンに大きな問題があることを明らかにしました」と米国医学研究所(IOM、全米医学アカデミーの前身)のケネス・シャイン所長(当時)は話している。


「新しいワクチン(The New Vaccines)」(2002年5月号)
エイズ(後天性免疫不全症候群)ワクチンの開発の大きな課題は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)がヘルパーTリンパ球という免疫応答の大部分をコントロールする細胞そのものに感染することだろう。さらに、HIVは自らの遺伝子設計図をTリンパ球のゲノムに組み込み、その細胞への感染を永続化してしまう。

通常、感染した細胞が侵入者に反応するのとは異なり、HIVを保有する細胞の一部は免疫系に警告を発するウイルス・タンパク質を生成しない可能性がある。さらに、HIVはそのエンベロープ・タンパク質(HIVを感染先の細胞に加え、ウイルスと細胞膜との融合を促す)の一部を急速に変化させて、免疫系を混乱させる可能性がある。

このような問題があるにもかかわらず、ヒト用ワクチンを開発できると期待できる十分な理由がある。結局のところ、免疫系は、抗体やリンパ球の働きでウイルスを破壊しようとするからだ。