新型コロナ、米国でも感染者の集計・報告にばらつき
ビジネス・インパクト

We have no idea how to manage all the testing data we’re collecting 新型コロナ、米国でも感染者の集計・報告にばらつき

新型コロナウイルス感染症の検査結果の集計・報告をめぐって、米国で混乱が起きている。州ごとに集計方法が異なり、報告にもばらつきがあるのが原因だ。 by Neel V. Patel2020.05.12

現在のこの危機的状況の中で、自分が疫学者あるいは公衆衛生の専門家であると想像してみよう。たった今、政府高官からの連絡で、都市封鎖の制限を緩和しても安全かどうか助言を求められたとしたら? その答えを準備するには、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査データの内容を詳しく調べる必要がある。

検査データを手に入れることは、対象となる問題の地域および隣接地域の保健局のWebサイトに進み、個別に情報を引き出し、その情報すべてを照合することを意味する。情報が最新であるかは、祈るしかない。Webサイトでは簡単に手に入らない数字や情報を探し出す場合は、保健局に直接問い合わせて特別に依頼する必要もあるかもしれない。こうしたプロセスのすべては、長く延々と続く苛立たしい仕事になるだろう。さらに、望んでいるデータや情報が手に入らない可能性すらある。

なぜなら、米国の公衆衛生システムは分散しているからだ。新型コロナウイルス感染症の場合、各州がデータを収集して報告する方法について一貫した基準がない。個々の州およびその保健局が、データの収集や整理、結果の報告など、検査の処理方法を決定する。そして、それが問題になる可能性がある。

ドレクセル大学ドーンサイフ公衆衛生学部の疫学者ニール・ゴールドスタイン助教授は、「ご想像のとおり、優れた検査が実施できる保健局もあれば、そうでもない保健局もあります」と述べる。

それぞれの州の保健局が、検査の陽性者数と陰性者数を報告している。だが、そこで格差が生じる。州は、郵便番号別など地理的に集計するのか、回復者数や確認済みもしくは予測される死者数をどう集計するのか、入院者数さらには呼吸器やICUの使用率といった要素を表示するかどうか、さらには患者の人種、年齢、性別、既往歴といった人口統計学的情報を含めるかどうかを選択することになる。

ニューヨーク市など一部の地域では、関係者向けに生データが自由に利用可能となっており、定期的に更新されている。だが、これほどの透明性は稀で、大抵の地域ではより詳細な検査データを得るために、時間も手間もかかる特別な依頼が必要だ。

こうしたアプローチと情報提供側の基準の食い違いが、米国におけるパンデミック対応の遅れを引き起こしている。検査データを集計および報告する統一された効率的な手段や伝達経路がなければ、都市封鎖解除への動きを手助けする最新の情報が不足し、本来不要なリソースや時間を使って、バラバラの数値を揃えたり項目の差を埋めたりしなければならない。接触者の追跡や監視、病院のリソース管理といった取り組みは、リアルタイムの検査情報に依存しているが、誰も同じ方法で報告していないとなると、それらの情報を手に入れるのは難しい。きちんとしたデータの収集が遅れれば、意思決定に影響を与える恐れがある。政策立案者は専門家が情報を平準化するのを待つ間、72時間前のデータに基づいて意思決定したいとは思っていない。

ゴールドスタイン助教授は、「データに一貫性がなければ、疫学者が集団レベルの結論を導き出 …

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