世界を覆う「マスク外交」 主役は中国テック企業
ビジネス・インパクト

The tech industry turns to mask diplomacy 世界を覆う「マスク外交」
主役は中国テック企業

新型コロナウイルス感染症の蔓延で世界中でマスクや個人用防護具の需要が急増する中、業務をいち早く再開した中国企業は積極的な「マスク外交」を繰り広げている。 by Mara Hvistendahl2020.05.20

今年初め、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が中国から世界中に広がるのを、シドニー在住のミルトン・ジョウとサウル・カーンは恐怖を感じながら見守っていた。ジョウは、オーストラリア最大級の太陽光発電所の開発を複数手掛けた再生可能エネルギー会社「マオネン・グループ(Maoneng Group)」の共同創業者で、カーンはあるエネルギー効率コンサルタント企業の元共同経営者だ。

スタートアップ企業向けのフェイスブック・グループで出会った2人は、ブロックチェーンを利用して海外へ出荷された商品の追跡することについて意見が一致した。2人は太陽光パネルなどの製品を中国から輸入した経験があり、医療用品のサプライチェーンが機能していることを期待していた。少なくとも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクの初期段階はそうだった。だが、彼らが目にしたのは医療従事者が医療用保護マスクや他の重要な物資を使い果たす姿だった。「私たちは何かがおかしいと気づきました。人々は物資をすぐに調達できていなかったのです」(カーン)。そして2人は、おそらく自分たちが力になれると思い至ったのだ。

マスクや保護マスク、その他の個人用防護具(PPE:Personal Protective Equipment)の需要が世界中で急増し、医療用品は地政学的な新たな火種となっている。各国の当局者は、物資を駐機場で買い取ったり、途中で押収したりして、強奪されたと互いに糾弾し合っている。ベルリン警察へ届くはずだった中国製保護マスクの束を米国のバイヤーが横取りしたと伝えられたとき、ドイツ当局者は「現代の海賊行為」だと非難した。

明るい話もある。混乱の最中、テック産業の大物たちが、自らの政治的影響力とプライベートジェットを駆使しして、高品質な医療用品の出荷を手配している。「多くの病院は地元で医療用品を仕入れています。医療関係者は現地での分類作業に慣れており、輸出入に関する書類仕事をしなくてもいい状況に慣れています。ですが、テック業界の人たちはもっとグローバルです。彼らは幅広い範囲で動いています」。その成果は、テック業界が切望しているイメージアップになる。

カーンとジョウは、非営利団体「ラピッドワード(RapidWard)」をオーストラリアで設立した。同社は世界中の政府や病院のために医療用品を購入し、物流業務も低料金で扱っている。荷物が時間どおりに届くように、場合によっては飛行機をチャーターすることもある。最初の顧客が支払いを済ませるまでは、ジョウ個人が商品代金を建て替えた。

一方、米国では、ベンチャーキャピタリストとテクノロジストのグループが、「オペレーション・マスクス(マスク作戦)」と呼ばれる同様の組織を設立している。メンバーのうち数人は、サンフランシスコの新興テクノロジー投資会社である8VC(Eight Partners VC)の一員だ。どちらの非営利組織も、現在大きな需要を抱えている。1月下旬の発足以来、ラピッドワードは、イタリア、イラン、スイスの医療関係者向けの商品を1億1100万ドル相当受注している。

ほかにも、中国国外で企業イメージを高めたい中国のテック企業や財団法人が、医療用品の出荷を手配している。通信業界大手のファーウェイ(Huawei)、ゲームとソーシャルメディアの複合企業であるテンセント(Tencent)、電子商取引大手アリババ(Alibaba)の共同創業者であるジャック・マーが設立した「ジャック・マー公益基金会」「アリババ公益基金会」などだ。

中国は、世界の個人用防護具の大部分を生産している。1月と2月に新型コロナウイルスが武漢で猛威を振るい、武漢が封鎖されたとき、米国やヨーロッパから供給品を次々と寄贈された中国の医療用品工場は、生産力を強化した。

その後、中国企業が業務を再開すると、中国政府は経済を復活させようとした。新型コロナウイルスが世界の国々に広がる中で医療機器の需要は急増し、工場所有者らは「紙幣印刷機を所有してい …

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