スタンフォードのワクチン配分計画、最前線の医師が排除された真相
ビジネス・インパクト

This is the Stanford vaccine algorithm that left out frontline doctors スタンフォードのワクチン配分計画、最前線の医師が排除された真相

米国で新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。限りあるワクチンの優先順位をどのように決定するのかを巡って、スタンフォード大学が揺れている。大学は明らかに不公平なワクチン配分計画の責任は「非常に複雑なアルゴリズム」にあるという。 by Karen Hao2021.01.07

スタンフォード大学医療センター(Stanford Medical Center)に所属する1300人を超える専攻医(レジデント)は衝撃を受けた。同センターが確保した最初の5000回分の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンが、わずか7人の専攻医にしか割り当てられていなかったからだ。専攻医の大半は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な流行)の最前線で働いている。そして、事務管理部門や自宅からリモート診察をしている医師が5000回分に含まれていることを知った専攻医らは、怒りをあらわにした。

2020年12月18日、初の新型コロナウイルス・ワクチン接種を祝う記念撮影で、少なくとも100人の専攻医が抗議した。病院の首脳陣は専攻医を優先しなかったことを謝罪し、「非常に複雑なアルゴリズム」が原因だと責任を転嫁した。

「倫理学者と感染症の専門家が数週間かけて開発してきた我々のアルゴリズムは(中略)、明らかに正しく機能しませんでした」。外来診療部門のティム・モリソン部長は、同式典のオンライン動画で専攻医らに語った。

多くの人がこれは言い逃れだと思っている。病院首脳陣は15日の段階でワクチン接種対象の専攻医がわずか5人という問題を認識しており、その対処としてアルゴリズムを修正するのではなく、接種対象の専攻医を2人追加して合計7人に変更していたからだ。

「アルゴリズムの大きな魅力の1つは、権力者が普通なら責任を負わされるような政治的に都合の悪い結果が出たとしても、それをブラックボックスのせいにできることです」。シリコンバレーの有力者で、評論家に転身したロジャー・マクナミーはツイッターに投稿した。「でも、誰にワクチンを接種するのかを決めるのは『人』です」とツイートしたのは、カリフォルニア大学ヘイスティングス校(ロースクール)のヴィーナ・デュバル教授(法学)である。「アルゴリズムは、彼らが意図したことを実行しただけです」。

スタンフォード大学の「意図」とは正確には何だったのか? 我々は、その意図を明らかにするためアルゴリズムを調査した。

アルゴリズムの仕組み

このスライドは、アルゴリズムの内容を説明するものとして部門長から専攻医に送られたものだ。複雑な機械学習アルゴリズム(「ブラックボックス」と呼ばれることが多い)ではなく、スタンフォード内で誰が最初にワクチンを接種を受けるのかを計算するためのルールベースの式になっている。これによると、年齢に関する「従業員基準変数」と「職務基準変数」、カリフォルニア州公衆衛生局のガイドラインの3つのカテゴリーが考慮されている。カテゴリーごとにスタッフに点数が付与され、満点は3.48だ。おそらく点数が高ければ高いほど、接種の優先順位が上がっていく(同センターに対してアルゴリズムに関するコメントを複数回求めたが、回答は得られなかった)。

従業員基準変数に関しては年齢に応じて直線的に得点が上がり、65歳を超えるか、または25歳未満の場合はさらに特別点が付与される。こうして若手および高齢のスタッフが優先され、一般的に中間年齢層に位置する専攻医や最前線のスタッフに不利な設定となっている。

職務変数は、総合得点に最も大きな影響を与える。アルゴリズムは2種類の方法で職務と部門ごとの新型コロナウイルス有病率を計算している …

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