嫌がらせ、ストーカー被害 女性テック起業家が語る 「多様性」の難しさ
ビジネス・インパクト

Why it’s so hard to make tech more diverse 嫌がらせ、ストーカー被害
女性テック起業家が語る
「多様性」の難しさ

「35歳未満のイノベーター35人」にかつて選出されたエンジニアのトレイシー・チョウは、ネット嫌がらせに対処するツールを開発しているテック起業家だ。自身が直面してきた数々の問題について、包み隠さず語った。 by Wudan Yan2021.08.19

MITテクノロジーレビューが2017年に「35歳未満のイノベーター35人」の1人としてトレイシー・チョウを表彰した当時、チョウはシリコンバレーの多様性問題を明らかにするために活動していた。ピンタレスト(Pinterest)のエンジニアとしてブログ記事の中で、テック企業にエンジニアリングチームで働く女性の人数に関するデータを公表するように呼びかけ、そのブログ記事は広く拡散されることになった。チョウはその回答を公開データベースに収集し、トップ企業の多くの技術チームがホモジニアス(均質的)な状態のままであることを明らかにした。

その約1年後、チョウはブロックパーティー(Block Party)という会社を立ち上げた。ツイッターのユーザーがフィードやメンションに表示されるツイートをコントロールできるようにすることで、ネット嫌がらせに取り組む会社だ。このサービスは1月に最初の有料ユーザーを獲得した。

チョウはテック業界で自身が直接体験してきた問題のいくつかを、ブロックパーティで解決したいと考えている。その問題には、チョウ自身がターゲットとなってきたネット嫌がらせも含まれる。サンフランシスコを拠点に活動するチョウが、テック業界に変革をもたらすために必要なこと、そして彼女のような起業家が遭遇する問題について語った。

前回お話をしたとき、私はピンタレストを退社したところでした。私はいつも小さな会社に魅力を感じてきました。ピンタレストに入社したとき、従業員は10人くらいでした。そして、1000人くらいのときに退職しました。何か新しいことをするために前へ進む時のように感じたからです。

私はこれまで多くのスタートアップ企業で働いてきて、スタートアップと資金調達にまつわる構造的な問題と、解決されるべき問題の選択に対してそのような要因が及ぼす影響について理解するようになりました。多くの創業者は当然、自身に直接影響を与える問題に取り組みます。そのような問題では何が重要で、何がテクノロジーによって改善できるかを簡単に理解できるからです。

私は、自分が次にどこへ進むか考えたとき、それまで自分が手がけた製品を思い浮かべながら、それに対して「自分はこれに興味があるのか? 作るものはあるか? それは商業的に成り立つか?」などの問いかけをしました。本当に重要な問題の中にはスタートアップでは解決できない問題がたくさんあります。

私は最終的にブロックパーティーの起業にたどり着きました。これは、私の経歴の中のいくつかの異なるスレッドをまとめたものです。私はさまざまなソーシャル・プラットフォーム企業でエンジニアとして働いてきました。コンテンツの監視やモデレート、品質向上に携わり、製品設計がコミュニティの行動にどのような影響を及ぼすかを理解することに取り組んできました。クォーラ(Quora)ではコンテンツの質を評価するモデレーション・ツールを開発しただけでなく、同サイトのポリシーに違反した人に対して罰則措置を講じたこともありました。

また、チーム内の多様性と代表性(リプレゼンテーション)の欠如によって製品がいかに偏った形で開発されるかについても、多くの時間を費やして調査してきました。例えば、一般的に虐待や嫌がらせの対象にならない人たちが集まった多様性のないチームでは、アプリにそれに対する防御機能を組み込む傾向はありません。

ブロックパーティーを起業することになった背景の最後の部分は、嫌がらせの標的となることが増えたことです。昨年、私は間違いなく、ネットでアジア人差別の嫌がらせを受けることが増えました。個人が私を狙ったものもあれば、ネット上で存在感を示しているだけで荒らしを招いてしまうこともありました。

私がインターネットを始めたのは、まだ子どもの頃です。最初はインターネットは友達とつながるための楽しい手段でした。私はAOLインスタント・メッセンジャーを使っていました。これは、高校の友達とチャットするのに便利な方法でした。私は携帯電話を持っていなかったので、家族と共有している電話回線を独り占めできませんでしたが、ザンガ(Xanga)やライブジャーナル(LiveJournal)などのブログ・プラットフォームも利用していました。当時はすばらしい情報発信源でした。

しかし、かなり早い段階で、誰かがザンガで私の悪口専用の匿名ページを作りました。高校での出来事に触れられていたので、学校の人だったと思います。その多くは、学業成績が良かった私に関する悪口でした。当時はそれほど気になりませんでしたが、大人になって振り返った時の方が気になりました。当時の私は、相手はただ自信がなく嫉妬しているだけだと思っていました。誰かが …

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