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ビジネス・インパクト

Abortion pills via telemedicine: 10 Breakthrough Technologies 2023 遠隔医療で中絶経口薬

米国で中絶の権利を認めた過去の判例が覆され、薬を用いた自宅での中絶が徐々に広まっている。中絶を禁止する州の住民のために、中絶薬の遠隔入手を支援する団体やスタートアップも現れた。

by Rebecca Ackermann 2023.03.07
Amrita Marino
キープレイヤー
シュワ、ヘイ・ジェーン、エイド・アクセス、ジャスト・ザ・ピル、アボーション・オンデマンド、全米家族計画連盟(PPFA)、プランC
実現時期
実現済み

米国連邦最高裁判所が2022年6月、人工妊娠中絶の権利を認めたおよそ50年前の判例を覆したことで、米国で中絶医療が非常に受けにくくなった。しかしこの流れに逆らうように、家から出ずに中絶医療を受けられるようになるという、大きなシフトが起こっている。2021年のパンデミックの最中、米国食品医薬品局(FDA)は、医療提供者が患者にミフェプリストンとミソプロストール(同時に服用すると中絶を誘発できる)という2つの錠剤を郵送することを一時的に許可した。その数年前にFDAは、これらの錠剤が妊娠第一期の中絶に安全かつ効果的であると認定している。そして2020年までに、これらの錠剤による中絶が、米国における中絶の半分以上を占めるようになった。さらに2021年末、FDAは郵送許可を恒久化した。

その6カ月後、米最高裁は「中絶は憲法上の権利ではない」との判決を下した。中絶を禁止する州で「トリガー法」が施行されると、中絶薬への関心と需要は急増し、エイド・アクセス(Aid Access)のような非営利団体や、シュワ(Choix)ジャスト・ザ・ピル(Just the Pill)ヘイ・ジェーン(Hey Jane)のようなスタートアップは支援の準備を整えた。手続きはそれぞれのサービスによって異なるが、対象となる患者は基本的に写真付き身分証明書を使って登録し、ビデオ通話やテキスト、アプリを通じて医療提供者の診察を受ける。診察した医療提供者は薬を処方し、各サービスはそれを患者に発送する。

薬による中絶が可能になったからといって、問題が解決したわけではない。欧州に本社を置くエイド・アクセスは、米国のどの州にも薬を発送するという点で特別だ。しかし郵送で中絶薬を提供するほとんどのスタートアップは、各州法に則っている。つまり、中絶を禁止している13の州や、医師が直接薬を処方しなければならない7つの州に住む人々は、州境を越えて移動するか、別の郵送先住所を設定してこれらのサービスを利用しなければならない。

それでもなお、中絶薬の遠隔入手を支援するこれらの団体は、危機的状況にある多くの人々に医療を提供してきた。彼らの先見性と不断の努力のおかげで、人々にとって必要な時にこうした解決策が用意されていたのだ。

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