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2024年の「世界を変える10大技術」から漏れた5つの候補
Stephanie Arnett/MITTR | Getty, Envato, NASA, VCU Capital/Flickr
5 things we didn’t put on our 2024 list of 10 Breakthrough Technologies

2024年の「世界を変える10大技術」から漏れた5つの候補

MITテクノロジーレビューは来月、現在最も重要だと考える10大技術のリストを公開する予定だ。その前に、候補に挙がったものの最終的に選外となった5つの技術を紹介しよう。 by Amy Nordrum2023.12.16

未来を予測できる人は誰もいない。しかし、MITテクノロジーレビューでは、将来何が起こるかを考えることに多くの時間を費やしている。1つ、私たちが知っていることは、テクノロジーについて予測するのは特に難しいということである。新興テクノロジーのほとんどは立ち消えになったり、一瞬で燃え尽きたりしてしまう。消費者向けデバイスとしてスタートしても、最終的にはより専門的な分野でニッチな需要を見つけることになる製品もある。その名前を誰もが知っているようになる技術はほんの一握りだ。

MITテクノロジーレビューは毎年、(良くも悪くも)私たちの生活を変える可能性が最も高いと思われる技術の進歩を選んで、「ブレークスルー・テクノロジー10(世界を変える10大技術)」のリストを作成してきた。20年以上にわたって続くリストの最新版となる2024年版を、来月発表する予定だ。

本誌の予測はこれまで常に正しかったわけではない(バクスターというロボットを覚えているだろうか?)。だが、多くの場合、重要な進歩分野を早い段階で発見してきた(本誌は自然言語処理を2001 年の最初のリストに入れている) 。現在、このテクノロジーは大規模言語モデルや「チャットGPT(ChatGPT)」などの生成AIツールを支えるまでになった。

リストの作成にあたっては、毎年、MITテクノロジーレビューの記者や編集者がスポットを当てるのに値すると思われるテクノロジーをノミネートし、どのテクノロジーが採用されるべきかを数週間かけて議論する。以下で、今回は選択しなかったテクノロジーのいくつかと、現時点ではそれらを採用しなかった理由を紹介しよう。

アルツハイマー病の新薬

アルツハイマー病の患者には、長い間治療の選択肢がなかった。現在、いくつかの新薬は、脳内の有害なプラークを除去することにより、わずかではあるものの認知機能の低下を遅らせることが明らかになっている。7月に、米国食品医薬品局(FDA)はエーザイとバイオジェン(Biogen)の「レケンビ(Leqembi)」を承認した。続いて、イーライリリー(Eli Lilly)の「ドナネマブ(donanemab)」がまもなく承認される可能性がある。しかし、これらの新薬には脳の浮腫や出血などの重篤な副作用が伴い、場合によっては死に至ることもあると報告されている。さらにこの薬は投与が難しい。患者は静脈注射で投与を受け、脳の浮腫をチェックするために定期的に磁気共鳴画像(MRI)による画像検査を受けなければならない。これらのデメリットにより、今回私たちは10大技術のリストから外すことにした。

持続可能な航空燃料(SAFs)

食用油、動物性脂肪の残り物、または農業廃棄物から作られた代替ジェット燃料は、航空機からの二酸化炭素の排出量を削減できる可能性がある。これらは何年も開発が続けられており、技術は着実に進歩している。最近では、いくつかのデモンストレーション飛行が実施されている。しかし、気候に意味のある規模の影響を与えるためには、これらの燃料の生産と使用を大幅に増やす必要がある。この燃料は確かに有望に思えるが、今年のリストに持続可能な航空燃料(SAFs:Sustainable Aviation Fuels)を掲載するに値する重要な瞬間や、「ブレークスルー」はなかった。

太陽地球工学

太陽のエネルギーを反射して地球を冷やす粒子を成層圏に放出することは、地球温暖化に対抗する方法の1つになるかもしれない。このアイデアは科学界で非常に物議を醸しているが、少数の研究者や企業は、小規模な高空飛行試験を開始することで、この方法が可能かどうかを検討し始めている。そして、とあるスタートアップ企業の試みを受けて、メキシコは2023年に入って太陽地球工学の実験を禁止することになった。太陽地球工学が今後どこへ向かうのか、あるいは初期の取り組みが行き詰まるのかどうかは、現状ではまったく明らかではない。この不確実性により、私たちは今のところリストへの掲載は延期することにした。

雄同士による生殖

3月、科学者らは2匹の雄のマウスから細胞を採取し、それらの細胞の一部を卵子に変えることで健康なマウスの子の作成に成功したと発表した。概念実証研究は、この技術が同性の動物間の生殖を可能にし、おそらくパートナーなしで動物が生殖できる可能性があることを示している。この進歩により、いつか他の動物、おそらくヒトでも同性による生殖が可能になるかもしれない。しかし、マウスでの実験はヒトでの実験とは程遠いため、今回は掲載を見合わせた。

ナロキソン点鼻スプレーが店頭で購入できるように

3月、FDAはオピオイドの過剰摂取状態を改善するナロキソン点鼻スプレーの店頭での販売を初めて承認した。このスプレーは現在、CVS、ウォルグリーンズ(Walgreens)、ウォルマート(Walmart)など全米の小売店で販売されており、2回分の価格は約45ドルだ。オピオイドの過剰摂取により年間8万人以上の米国人が死亡していることを考えると、この薬を処方箋なしでさらに広く入手できるようになれば、間違いなく人々の命が救われることになるだろう。しかし私たちの見解では、今回の本当の進歩は、科学的または技術的なブレークスルーではなく新しい流通方法の進歩と言える。

 

では、これらの代わりにどんな技術が選ばれたのか? 1月の発表を楽しみにしてほしい。

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エイミー・ノードラム [Amy Nordrum]米国版 企画編集者
ニューヨークを拠点とするMITテクノロジーレビューの企画編集者。新興技術とそれが私たちの世界をどう形作るのか、独創的なアイデアや意見を発掘して発表することに注力している。以前は、IEEE Spectrumのニュース責任者を務めていた。
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MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

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