フラッシュ2023年1月17日
体づくりの左右非対称性を決める「力」を発見=理研など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]理化学研究所や東北大学などの共同研究チームは、哺乳類の発生過程の初期に体の左右の違いを決定するシグナルが、「機械的な力」によって制御されていることを明らかにした。これまで20年にわたり、体の左右対称性が破られる仕組みについて論争が続いており、今回の研究成果は生物物理学的視点からそのメカニズムを解明した画期的なものだという。
ヒトやマウスの内臓は、心臓が体の左側にあるなど非対称に配置されている。この左右の非対称性は、胎児(胚)が成長する初期の段階で、胚の腹側にある「ノード」と呼ばれるくぼみにおいて「左側を決めるシグナル」が活性化されることで決定される。だが、そのメカニズムは長らく未解明であった。
今回、研究チームはマウスの胚を用いて、光ピンセットや超解像顕微鏡など独自の先進的な光学顕微鏡で物理的解析を実施。その結果、(1)ノードで生じる左向きの体液の流れ(ノード流)により、ノードの左側の不動繊毛は腹側に曲げられ、右側の不動繊毛は背側に曲げられること、(2)不動繊毛は腹側への曲げのみに反応する「曲げられる向きを感知できるアンテナ」であることを発見。不動繊毛がノード流の力を感知し、ノードの左側のみで左側を決めるシグナルが活性化することを明らかにした。
今回の研究論文は、科学雑誌サイエンス(Science)オンライン版に、2023年1月6日付けで掲載された。
(中條)
- 人気の記事ランキング
- Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
- How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
- Three reasons robots are about to become more way useful 生成AI革命の次は「ロボット革命」 夢が近づく3つの理由
- This US startup makes a crucial chip material and is taking on a Japanese giant 知られざる半導体材料の巨人 「味の素」の牙城を狙う 米スタートアップの勝算