フラッシュ2023年11月28日
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コンピューティング
量子コンピューターのエラー抑制技術の理論限界を解明
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学の研究チームは、量子コンピューターのエラー抑制技術の限界を理論的に証明し、「量子エラー抑制」のみを用いる現行の計算方式では、実行可能な演算回数が制限されることを、世界で初めて明らかにした。さらに、解明した理論限界を達成するような、エラーを最も効率よく除去できる最適な量子エラー抑制手法を、新たに同定した。
量子コンピューターでは、外部のノイズなど様々な要因により、計算を実行中にエラーが発生する。量子エラー抑制とは、エラーの多い量子コンピューターで計算を複数回実行し、その実行結果を古典コンピューターに事後処理させることによって、エラーのない真の出力を予測する手法群の総称である。
研究チームは今回、「量子推定理論」を用いた解析によって、量子エラー抑制に必要な量子コンピューターの実行回数(=計算時間)が、量子コンピューターの演算回数に対して指数的に増大するという理論限界を世界で初めて導出した。さらに、エラーの多い量子コンピューターの計算結果を定数倍するという単純な手法により、導出した計算時間の限界を達成可能であるということも明らかにした。
同チームによると、今回の研究成果は、量子エラー抑制に基づく現行の量子コンピューターの限界を明らかにすることで、「量子エラー訂正」と呼ばれる、より抜本的な対策をする機構に基づく量子コンピューターの早期開発の必要性を提示するものであるという。加えて、今回得られた最適手法の知見を量子エラー訂正とハイブリッドに組み合わせることで、量子コンピューターの早期の実用化に貢献することも期待されるとしている。
研究論文は、米国科学誌「フィジカルレビュー・レターズ(Physical Review Letters)」のオンライン版に2023年11月22日付けで掲載された。
(中條)
12月5日11時25分更新:掲載当初、研究チーム名およびリンク先に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
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