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AIエージェントがまだ 
「使えない」理由——
プロトコル標準化が握る鍵
Sarah Rogers/MIT Technology Review | Getty Images
人工知能(AI) Insider Online限定
These protocols will help AI agents navigate our messy lives

AIエージェントがまだ
「使えない」理由——
プロトコル標準化が握る鍵

アンソロピックやグーグルなどの企業は、AIエージェントが他のプログラムやエージェントと連携するためのより良い方法の開発に取り組んでいる。しかし、やるべきことはまだまだある。ここでは3つの主な課題について説明しよう。 by Peter Hall2025.08.07

この記事の3つのポイント
  1. 企業がAIエージェント発表を増やしているがデジタル連携に課題がある
  2. アンソロピックやグーグルがエージェント相互作用プロトコルを開発
  3. セキュリティ、オープン性、自然言語処理の非効率性などが課題
summarized by Claude 3

電子メールの送信、ドキュメントの作成、データベースの編集など、ユーザーの代わりに作業をする人工知能(AI)エージェントを発表する企業が増えている。しかし、こうしたエージェントの最初の評価は、よく言っても賛否両論である。というのも、これらのエージェントは私たちのデジタルライフのさまざまな要素との連携に難儀しているからだ。

この問題の一部には、エージェントが実世界に上手く対処するために必要なインフラがまだ構築途中だということがある。エージェントに自分の代わりに仕事をこなしてもらいたいのであれば、私たちはエージェントに必要なツールを与えると同時に、その力を責任を持って使うようにさせる必要がある。

そのようなことに取り組んでいる企業や組織に、アンソロピック(Anthropic)とグーグルがある。両社はこの1年で、AIエージェントが互いや周囲の環境とどのように相互作用すべきかを定義することを試みるプロトコルを発表している。これらのプロトコルにより、エージェントが電子メールクライアントやメモアプリのような他のプログラムを制御することがより容易になるかもしれない。

その理由は、私たちのオンライン世界の大部分を支配しているコンピューターやプログラム間のつながりである、アプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)に関係している。APIは現在、「ピング(ping)」に対して標準化された情報で応答している。しかし、AIモデルは毎回まったく同じように動作するようにはできていない。AIモデルが会話的で表現豊かであるという印象を与えるのに役立っているランダム性こそが、APIを呼び出すことと回答を理解することの両方を難しくしているのだ。

「モデルは自然な言葉を話します」とアンソロピックのプロジェクト・マネージャーであるテオ・チューは話す。「(モデルが)文脈を把握し、それを基に何かをするためには、その文脈がモデルにとって意味のあるものになるようにする翻訳レイヤーが必要です」。チューは、そうした翻訳手法の1つとして、2024年末にアンソロピックが発表した「モデル・コンテキスト・プロトコル(MCP)」に取り組んでいる。

MCPは、AIエージェントがさまざまなプログラムを通じて実世界とどのように相互作用するかを標準化しようとする試みで、すでに非常によく使われている。MCPサーバー(エージェントがアクセスできるさまざまなプログラムやツールのポータルに相当する)用のあるWebアグリゲーターには、すでに1万5000以上のサーバーがリストアップされている。

AIエージェントが互いにどのように連携するかを管理する方法を見つけるのは、より難しい課題であることに間違いない。グーグルが4月に発表したエージェント・ツー・エージェント(Agent2Agent:A2A)プロトコルは、この課題に挑もうとしている。MCPが言葉やコードの間でリクエストを変換するのに対し、A2Aはエージェント間のやり取りを調整しようとする。これは、「単一目的のエージェントを超えて進歩するため、AI業界にとって不可欠な次のステップ」だと、グーグル・クラウド(Google Cloud)でA2Aに携わっているラオ・スラパネニはMITテクノロジーレビュー宛てのメールで述べている。

グーグルによると、すでにアドビやセールスフォースなど150社がA2Aを開発・採用するために同社と提携している。MCPもA2Aも、高いレベルではAIエージェントが他のサービスと安全な連携を確保するために、絶対にする必要があること、した方がよいこと、そしてすべきでないことをAIエージェントに教える。ある意味で両者は補完的な関係にある。A2Aのやり取りにおける各エージェントは、それぞれがMCPを使って相手から求められた情報を取得している可能性があるのだ。

しかしチューは、MCPは「明らかにまだ初期段階」であり、A2Aのロードマップには依然として多くの課題があると強調している。以降では、MCP、A2A、その他のエージェント・プロトコルの主な成長分野として、セキュリティ、オープン性、効率性の3つについて説明する。

これらのプロトコルはセキュリティに関して何を定めるべきか?

研究者や開発者はAIモデルがどのように機能するのかをまだよく理解しておらず、常に新たな脆弱性が発見されている。 …

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