フラッシュ2023年5月24日
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オミクロン株XBF系統への中和活性、2価ワクチン接種で3倍に
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学、国立国際医療研究センター、日本相撲協会診療所、米ロス・アラモス国立研究所の研究グループは、2023年2月〜3月に豪州で流行した新型コロナウイルス・オミクロン株の「XBF系統」に対する既存の抗体薬、抗ウイルス薬、2価ワクチンの効果を検証し、BA.4/5株対応2価ワクチンの接種によって、XBF系統に対する中和活性が増強されることを明らかにした。
研究グループは患者からXBF系統のウイルスを分離し、治療薬の効果を試験管内で検証した。まず、4種類の抗体薬(ソトロビマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ)の感染阻害効果(中和活性)を調べた。その結果、ベブテロビマブはXBF系統に対して従来株と同程度の高い中和活性を示したが、残りの3種類の抗体薬の中和活性はいずれも著しく低下していた。
続いて、日本国内で承認を受けている4種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル、エンシトレルビル)の効果を検証した。その結果、4種類ともXBF系統に対して、従来株に対する効果と同程度の高い増殖抑制効果を示した。
さらに、mRNAワクチンの接種を受けた被験者から血漿を採取し、そのXBF系統に対する中和活性を検証した。ワクチン接種を5回受け、5回目にはBA.4/5株対応2価mRNAワクチンの接種を受けた被験者の血漿のXBF系統に対する中和活性は、従来株やBA.2系統に対する活性よりも顕著に低かったが、ほとんどの検体が中和活性を有していた。
同一人物から採取したmRNAワクチンの4回目接種後の血漿と、その後に5回目としてBA.4/5株対応2価mRNAワクチン接種を受けた後の血漿のそれぞれの中和活性を比較したところ、4回接種済みの血漿に比べて5回接種済みの血漿はXBF系統に対する中和活性が約3倍上昇していた。
研究成果は5月11日、ランセット 地域医療 ・西太平洋版(The Lancet Regional Health - Western Pacific)にオンライン掲載された。
(笹田)
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