フラッシュ2024年5月1日
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生物工学/医療
名大が「早老症」原因の一端を解明、アルデヒドがDNAにつける傷
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]名古屋大学の研究チームは、急速に老化が進行する遺伝性疾患「早老症」の原因として、傷ついた遺伝子を素早く治せないことが関係していることを明らかにした。酒を飲むことなどで細胞の中で作られるアルデヒド類(ホルムアルデヒドなど)が、DNAの遺伝子を傷つけて老化を引き起こす「老化原因物質」であり、日本人の半数は、アルデヒドにより、遺伝子が傷つきやすい性質があることがわかった。
酒を少量飲むだけで気分が悪くなってしまうのは、遺伝的にアルデヒド分解酵素「ALDH2」の活性が弱いため、アルデヒドを分解できなくなることが原因とされている。
研究チームは2020年に、「ADH5」と呼ばれる別のアルデヒド分解酵素がALDH2と同時に働かなくなることで、血液症状を中心に早期老化症状を示す遺伝性疾患「AMeD症候群」を発症することを報告した。今回の研究では、体内で分解できずに残ったアルデヒド由来のDNAの傷がAMeD症候群で蓄積することや、アルデヒドによりできたDNAの傷が素早く治される仕組みを解明することで、遺伝性早老症や老化の原因の一端を明らかにした。
今回の研究成果は、急速に老化が進行する希少疾患の原因の一端を解明したものであり、治療ターゲットの創出に繋がると期待される。研究チームはさらに、老化原因物質としてアルデヒドを新たに提唱した。研究論文は、ネイチャー・セル・バイオロジー(Nature Cell Biology)に2024年4月10日付けで掲載された。
(中條)
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