計算機だけじゃない量子技術の応用、新方式の地中探査レーダー
量子コンピューターで注目される量子技術だが、センサー分野でも革新が進んでいる。米研究チームが開発した量子レーダーは、従来のレーダーシステムを大幅に小型化でき、地下のパイプや構造物を精密に画像化できるという。 by Sophia Chen2025.08.22
- この記事の3つのポイント
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- 物理学者がガラスセル内の原子雲で反射電波を検出する新型レーダーを開発した
- セシウム原子をレーザーで膨張させリュードベリ原子として電波受信機に利用する
- 研究チームが最大5メートル離れた物体を4.7センチの精度で位置特定に成功した
物理学者は、ガラスセル内の原子雲を用いて反射電波を検出することで、地下の画像化に役立つ新しいタイプのレーダーを開発した。このレーダーは、物体の量子力学的性質を測定装置として利用する新興技術である量子センサーの一種である。まだ試作段階だが、地下の公共インフラ建設、天然ガス井の掘削、遺跡の発掘といった状況で地中の物体を画像化する用途が期待されている。
従来のレーダーと同様に、この装置も電波を送信し、近くの物体で反射させる。反射波が戻るまでの時間を測定することで、物体の位置を特定できる。従来のレーダーでは、大型アンテナなどの受信機器を用いて反射波を検出するが、この新しい装置では、戻ってきた波と原子雲の相互作用を検出することで反射波を捉える。
現在のレーダー装置は、研究者らがテストの便宜のために光学テーブル上の部品に接続したままにしているため、まだ大型である。しかし、彼らはこの量子レーダーが従来の設計よりも大幅に小型化できると考えている。「信号を受信するための大きな金属構造ではなく、約1センチメートルの小さなガラスセルに収められた原子を使えるようになりました」。米国国立標準技術研究所(NIST)の物理学者で研究チームの一員であるマシュー・シモンズは述べる。NISTは、防衛企業のRTX(RTX)と協力してこのレーダーを開発した。
レーダーの量子部品として機能するガラスセルには、室温で保持されたセシウム原子が充填されている。研究者はレーザーを用いて各セシウム原子を通常の約1万倍、すなわち細菌ほどの大きさにまで膨張させる。この膨張状態の原子はリュードベリ原子と呼ばれる。
入射する電波がリュードベリ原子に当たると、原子核周囲の電子分布が乱れる。研究者は、原子にレーザーを照射し、光を放出させることでこの乱れを検出する。原子が電波と相互作用しているとき、放出される光の色が変化する。この色の変化を監視することで、原子を受信機として利用することができる。ポーランド・ワ …
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