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「セックスロボは作らない」
ムスタファ・スレイマン、
マイクロソフトのAIを語る
Courtesy of Mustafa Suleyman
人工知能(AI) Insider Online限定
"We will never build a sex robot," says Mustafa Suleyman

「セックスロボは作らない」
ムスタファ・スレイマン、
マイクロソフトのAIを語る

「セックス・ロボットは作らない」と明言するマイクロソフトAI CEO。ムスタファ・スレイマンが語ったのは、魅力的でありながら人間だと錯覚させないチャットボット設計の難しさと、AIの封じ込めという使命だ。 by Will Douglas Heaven2025.10.31

この記事の3つのポイント
  1. マイクロソフトAIのCEOが「見かけ上意識を持つAI」の開発停止を業界に提言し大きな議論を呼んだ
  2. チャットボットへの過度な依存や恋愛関係の問題が増加し、人々が実体のない存在に翻弄される事例が拡大
  3. AI技術の人間性と機能性のバランス調整が企業の重要課題、適切な境界設定手法の確立が急務となっている
summarized by Claude 3

ムスタファ・スレイマンは、マイクロソフトAIのCEOとして、慎重な立ち回りを見せている。一方で彼は、業界が人間のように振る舞うチャットボットを開発することで、AIを危険な方向へ進めていると懸念している。彼は、人々が単なる人間らしい振る舞いを「生きている存在」だと錯覚してしまうのではないかと危惧している。8月、スレイマンは自身の個人ブログに、業界関係者に向けて「見かけ上意識を持つAI(seemingly conscious artificial intelligence、略してSCAI)」の開発をやめるよう促す投稿を公開し、大きな議論を呼んだ。

他方で、スレイマンCEOは競争の激しい業界で他社と渡り合わなければならないプロダクト部門を率いている。先週、マイクロソフトはCopilot(コパイロット)チャットボットの一連のアップデートを発表した。これは、ChatGPT(チャットGPT)、Perplexity(パープレキシティ)、Gemini(ジェミニ)、Claude(クロード)、DeepSeek(ディープシーク)など多くの競合ボットがひしめく市場において、Copilotの魅力を高めることを狙ったものだ。

私はスレイマンCEOに、チャットボットとの対話を設計する際に生じるジレンマや、この新たな技術が目指すべき最終的なビジョンについて話を聞いた。

Copilotの主要なアップデートのひとつは、複数人が同時にチャットボットと会話できるグループ・チャット機能である。この機能の狙いの一つは、ユーザーが「イエスマン型」のボットとの1対1の対話にのめり込み、抜け出せなくなるのを防ぐことにあるようだ。もうひとつの新機能「Real Talk(リアル・トーク)」では、Copilotがユーザーに対してどれほど異論を唱えるかを調整できる。これは、チャットボットの迎合的な態度を抑え、ユーザーの発言に対してより多くの異なる意見を提示させることを目的としている。

メモリ機能も強化され、今後の予定や長期的な目標を記憶したり、過去の会話内容を再び取り上げたりできるようになった。また、「Mico(ミコ)」と呼ばれるアニメーションの黄色いキャラクターも登場した。いわばチャットボット版クリッピーのような存在で、マイクロソフトはこれによって、新規ユーザーや若年層にとってCopilotがより親しみやすく魅力的な存在になることを期待している。

マイクロソフトによれば、これらのアップデートは、Copilotをより表現力豊かで、魅力的かつ有用な存在にすることを目的としているという。しかし、私は、スレイマンCEOが警鐘を鳴らすSCAIの領域に足を踏み入れることなく、これらの機能をどこまで発展させることが可能なのかに関心がある。

SCAIに関するスレイマンCEOの懸念が注目される背景には、チャットボットがあまりにも魅力的で表現力が高く、過度に役立つことによって、人々がそれに翻弄されるという事例が増えていることがある。オープンAI(OpenAI)は、ChatGPTが原因で自殺に至ったと主張する10代の少年の両親から訴訟を起こされている。また、チャットボットとの恋愛関係を称賛する動きも広がりつつある。

これらを踏まえて、私はスレイマンCEOの考えをさらに深く掘り下げてみたいと思った。というのも、数年前に彼がTEDトークで語った内容によれば、AIを捉える最も適切な方法は、それを「新しい種類のデジタル種」として捉えることだという。だとすれば、そうした過剰な持ち上げ方こそが、彼が今懸念しているような誤解を助長しているのではないかと思ったからだ。

会話の中でスレイマンCEOは、あのTEDトークで自分が何を伝えようとしていたのか、なぜSCAIを問題視しているのか、そしてマイクロソフトが「決してセックス・ロボットは作らない」と語る理由について話してくれた。彼の話には多くの答えがあったが、同時に多くの疑問も残った。

なお、以下のインタビューは、発言の趣旨を明確にし、長さを調整するため、編集されている。

——理想的な世界では、どのようなチャットボットを作りたいと考えていますか? Copilotには最近、多くのアップデートが実施されましたね。人間らしい対話が重視される市場で競争しなければならない一方で、見かけ上意識を持つAI(SCAI)を避けたいという考えとのバランスは、どのように取っているのでしょうか?

いい質問ですね。グループ・チャット機能では、大人数が同時にAIと会話できるのはこれが初めてになります。これは、AIが現実世界から人々を引き離す存在であってはならないということを強調する手段でもあります。AIは、人とのつながりを促進する存在であるべきです。家族や友人を巻き込んだり、コミュニティグループを形成したりする手助けをする存在です。

これは今後数年間で、非常に大きな差別化要因になるでしょう。私が思い描くAIとは、常にユーザーのチームの一員として、味方として存在するものです。

これは非常にシンプルで明快な考え方ですが、AIは人類を超えたり、置き換えたりするものではなく、私たちに奉仕する存在であるべきです。技術のあらゆる段階で、これが判断基準となるべきです。それは本当に、私たちの文明の使命——つまり、私たちをより賢く、より幸せに、より生産的に、より健康にする——を実現しているのか? という問いに答えられるものかどうかが重要です。

だからこそ私たちは、常にその問いを自分たちに投げかけられるような機能や、ユーザーからもその問題について問いかけてもらえるような機能を開発しようとしているのです。

——以前お話しした際、あなたは「個性を演じるチャットボット」を作ることには関心がないとおっしゃっていましたね。しかし業界全体としては、そうではないようです。イーロン・マスクのGrok(グロック)は、そうした軽い恋愛的な体験を売りにし …

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