フラッシュ2023年5月1日
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電圧を大幅に高めたレアメタルフリー空気電池を開発=東北大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東北大学と東北大学発ベンチャーであるアジュールエナジーの共同研究チームは、独自に開発したセルを用いることにより、開放電圧が2ボルト(V)以上で高い出力を有する亜鉛空気電池を実現できることを見い出した。電気自動車やドローンに金属空気電池を適用する際のボトルネックとなっていた電圧と出力の問題を解決する可能性のある研究成果として期待される。
これまでに研究チームは、レアメタルフリーで高い酸素還元反応(ORB)活性を示す白金代替の高機能触媒「AZUL」を開発。同触媒がアルカリ環境下で白金炭素触媒に匹敵する性能を示すことを明らかにしている。今回は、正極にAZUL触媒を使用し、正極側に酸性電解質を、負極側にアルカリ電解質を設置したタンデム型セルを作製することで、最大2.25Vの電圧を発生させることに成功した。
白金などの貴金属は強塩酸水溶液中で塩化物となり分解するため、十分な触媒活性が得られず、性能が低下しやすい。これに対し、金属錯体系の触媒分子を用いたAZUL触媒は強塩酸水溶液中でも安定であり、安定した放電特性を示すため、レアメタルフリーの白金代替触媒として有効であるという。
亜鉛空気電池は容量の大きさから次世代エネルギーデバイスとして期待されているが、電圧が1.4V程度で出力も小さいため、低出力で長時間駆動する補聴器など、限られた用途にしか用いられてこなかった。研究論文は、米国物理学会出版の新しい科学誌、APLエナジー(APL Energy)のオンライン速報版に2023年4月24日付けで掲載された。
(中條)
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