フラッシュ2023年8月22日
-
気候変動/エネルギー
難分解性プラスチックのリサイクル技術を開発=産総研
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]産業技術総合研究所の研究チームは、リサイクルが難しいスーパーエンジニアリング・プラスチック(以下「スーパーエンプラ」)を、穏和な温度条件で、直接、原料物質に分解する技術を開発した。生成される原料物質の一つであるビスフェノールSはスーパーエンプラを構成する汎用的な原料であり、合成に再利用できる。
研究チームは今回、スーパーエンプラの一つであるポリスルホン樹脂が、構造中にビスフェノール類、特に、ビスフェノールS型の骨格を有することに着目。ポリスルホン樹脂を分解し、ビスフェノール類を効率よく得ることができれば、ポリスルホン樹脂のケミカルリサイクルに応用可能だと考えた。
そこで同チームは、ポリスルホン樹脂からビスフェノール類を効率よく生成するために、同樹脂の炭素-酸素結合を選択的に切断する新たな解重合反応を開発。水酸化アルカリを主成分とする解重合反応剤によって、150度という穏和な温度条件で樹脂内部の特定の炭素-酸素結合を切断し、モノマーへ分解することに成功した。
スーパーエンプラは、耐熱性が高く機械的強度が求められる製品に広く使われているが、樹脂を構成している化学結合が強固でモノマーに分解するのが難しいため、リサイクル技術が確立されていない。従来のガス化(600℃以上)や亜臨界水による分解(250℃程度、おおむね10~20メガパスカル)に必要な温度を大きく下回る穏和な温度条件下でスーパーエンプラを分解できる今回の技術は、安定樹脂材料のリサイクル技術確立につながる可能性がある。
研究論文は、学術誌「ジャックスAu(JACS Au)」に2023年8月17日付けで掲載された。
(中條)
-
- 人気の記事ランキング
-
- How AI and Wikipedia have sent vulnerable languages into a doom spiral AI翻訳のゴミに汚染された ウィキペディア、 マイナー言語にとどめ
- The three big unanswered questions about Sora 時間も資金も溶かす? AI動画SNS「Sora」3つの疑問
- 2025 Climate Tech Companies to Watch: HiNa Battery Technology and its effort to commercialize salt cells 気候テック10:ナトリウムイオンでリチウム代替狙う中国ハイナ
- EV tax credits are dead in the US. Now what? 米EV減税が正式廃止、今後の動きをドイツの先例から予想