KADOKAWA Technology Review
×
カバーストーリー 無料会員限定
Wind Fuels the North Sea’s Next Energy Boom

北ヨーロッパの風力発電は
政治的にクリーンではない

石油産業に代わって、巨大な洋上風力発電が北ヨーロッパに電気と利権を生み出す by Richard Martin2016.07.02

イギリス沖の石油・ガス産業の中心地、スコットランドのアバディーンは、長年にわたってエネルギー転換の渦中にある。北海が、石油を産出する海域から、洋上風力発電の世界的中心地に変わりつつあるのだ。

産業コンサルタント企業のウッドマッケンジーによれば、石油価格が1バレルあたり50ドルほどに低下したことに伴い、北海の50カ所もの油田・ガス田が今年閉鎖される可能性があるという。ウッドマッケンジーは、たとえ原油が1バレルあたり85ドルまで回復したとしても、石油会社は、北海の油田・ガス田を今後5年間で140カ所放棄しそうだと推定している。

対極をなすのが、洋上での風力発電用タービンの建設ブームだ。ヨーロッパは、2015年に洋上での風力発電容量を3ギガワット増加させたが、そのほとんどは北海での発電機の分だ。北海では、合計で約10ギガワットの設備容量に相当する約3000基の洋上風力発電タービンがすでに稼働している。毎年の増築分は2030年までの間に平均4ギガワットと見積もられ、60ギガワット以上の風力発電量をもたらすことが期待されている。洋上風力発電は現在、ヨーロッパの電力産生量の約1.5%をまかなっているが、ベルギーのブリュッセルに本拠地を置く業界団体WindEuropeによれば、この割合は2030年までに7%に上昇する。

さらに、計画の規模も拡大中だ。オランダ沖のジェミニ計画では、来年の計画完了時に合計600メガワットの発電量をまかなう150基のタービンを配備する予定だ。より大規模な計画も動いている。昨年末、イギリスのエネルギー・気候変動省は、ドッガーバンクと呼ばれる巨大計画にゴーサインを出した。この計画は、スコットランド北東沖の約 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The three big unanswered questions about Sora 時間も資金も溶かす? AI動画SNS「Sora」3つの疑問
  2. EV tax credits are dead in the US. Now what? 米EV減税が正式廃止、今後の動きをドイツの先例から予想
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
気候テック企業10 2025

MITテクノロジーレビューは毎年、気候テック分野で注目すべき企業を選出し、その一覧を発表している。 今回で3回目となる本特集では、なぜこれらの企業を選出したのか、そして米国の政治的変化をどのように考慮したのかについても詳しく解説している。併せてお読みいただきたい。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る