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宇宙ステーションにガパオライス、東南アジアが狙う「宇宙ハブ」
Courtesy of the author
Southeast Asia seeks its place in space

宇宙ステーションにガパオライス、東南アジアが狙う「宇宙ハブ」

10月に開催されたタイ宇宙博覧会では、国際宇宙ステーションに送られたガパオライスのパッケージが展示されていた。タイは赤道に近い地理的優位性を活かし、東南アジア初の宇宙港建設を検討中だ。 by Jonathan O'Callaghan2025.12.15

この記事の3つのポイント
  1. タイ最大食品会社がガパオライスを国際宇宙ステーションに送り宇宙食として実用化に成功した
  2. 東南アジア各国が宇宙産業参入を目指し衛星データ活用や製造業の強みを宇宙分野に展開している
  3. タイが赤道近くの地理的優位性を活かした宇宙港建設を検討し東南アジア初の打ち上げ拠点を目指す
summarized by Claude 3
thailand highlighted on a globe
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タイ宇宙博覧会
2025年10月16日~18日
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バンコク、タイ

10月のバンコクは焼けつくような暑さだった。市内でもひときわ賑わうショッピングモールで開かれていたタイ宇宙博覧会を見て回っていると、私は思わず二度見してしまった。派手な宇宙服や模型ロケットの展示の中に、見た目は地味なガパオライス(鶏肉のバジル炒めご飯)のパッケージがあったのだ。同じ種類の真空パックが国際宇宙ステーションに打ち上げられたばかりだと聞かされた。

「これは私たちが宇宙に送った本物のチキンです」。この話題作りを仕掛けた企業、タイ最大の食品会社であるチャロン・ポカパン・フーズ(Charoen Pokphand Foods)の広報担当者は話す。

それは思いがけない光景だったが、東南アジアの宇宙分野に対する高まる関心と熱気を物語っていた。デザイナーズ・ブランドの店や屋台が立ち並ぶ一角で開かれたこの博覧会には、ベトナム、マレーシア、シンガポール、そしてもちろんタイといった新興の宇宙開発国から多くの熱心な参加者が集まり、東南アジアの芽生えつつある宇宙産業が紹介されていた。

この地域の宇宙分野が今後どのように発展していくか、不確実性もあるが、楽観的な見方も多い。「東南アジアは宇宙ハブとしてリーダーシップを取るのに最適な位置にあります」。シンガポールで事業を展開する英国の投資会社セラフィム・スペース(Seraphim Space)のパートナー、キャンディス・ジョンソンは語る。「多くの機会があります」。

パッ・ガパオのサンプルパッケージも展示されていた。
COURTESY OF THE AUTHOR

例えばタイでは、今後数年のうちにロケット打ち上げ用の宇宙港を建設する可能性があると、同国の地理情報・宇宙技術開発機構(GISTDA)が博覧会の前日に発表した。「東南アジアにはまだ宇宙港がありません」と話すのは、同機構で宇宙経済振興部門の代理責任者を務めるアティパット・ワッタヌンタチャイだ。「私たちはそこにチャンスを見出しました」。タイは赤道に非常に近いため、そこからロケットを打ち上げれば、地球の自転によって追加の推進力が得られる強みがある。

アジアのさまざまな企業が、世界の宇宙経済にどのように参入できるかを模索している。ベトナム・ハノイに拠点を置くスタートアップ企業のベガコスモス(VegaCosmos)は、都市計画に衛星データを活用する方法を検討中だ。タイ発電公社(EGAT)は宇宙から雨嵐を監視し、地滑りを予測している。また、韓国・ソウルのスタートアップ企業であるスペースマップ(Spacemap)は、軌道上の衛星をより正確に追跡する新たなツールを開発しており、これに米宇宙軍が投資している。

しかし、私の目を惹いたのは宇宙チキンだった。おそらくそれは、古代寺院ときらめく超高層ビルが隣り合って存在するバンコクの街に見られる、伝統と現代性の並置を象徴していたからなのかもしれない。

6月、宇宙ステーションの宇宙飛行士たちは、ガパオライスとして知られるこの人気料理を味わった。通常は屋台で提供される料理だが、今回は米国を拠点とする企業アクシオム・スペース(Axiom Space)が運営する民間ミッションによって届けられた。チャロン・ポカパンは現在、この話題性を活用して「我が社のチキンはNASAに認められるほど高品質です」と宣伝している(残念ながら、私は実際に味わって評価することはできなかった)。

東南アジアの他の産業も、将来の宇宙ミッションに専門知識を提供できる可能性がある。ジョンソンによれば、この地域は製造業の強みを活かし、衛星向けのより優れた半導体を開発したり、宇宙空間での製造市場に参入したりすることができるという。

私は、バンコクを縫うように流れるチャオプラヤ川をタイのロングボートで下りながら博覧会を後にした。頭の中では、宇宙飛行士たちがガパオライスを味わう光景が浮かび、次に何が起こるのかを思い描いていた。

ジョナサン・オキャラハンは、商業宇宙飛行、天体物理学、宇宙探査を取材するバンコクを拠点とするフリーランス宇宙ジャーナリストである。

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