恒星間航行に必要な最少人数は? 遺伝的健全性の観点で計算した結果
何世代にもわたるような恒星間航行のミッションでは、遺伝子的に健全な世代を生み出すのに十分な人数の男女を搭乗させる必要がある。太陽に最も近い恒星まで現在最速の宇宙船で航行した場合、最初に何人の乗組員がいればミッションを成功できるかをフランスの科学者らが計算した。 by Emerging Technology from the arXiv2018.06.26
人類が銀河系を植民地化したいなら、居住可能な惑星を持つ近くの恒星までたどり着かなければならない。昨年、太陽に最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリに、居住可能な条件を備えた太陽系外惑星がいくつか存在する可能性があると天文学者らが発表した。
プロキシマ・ケンタウリは地球から4.2光年の距離にある。現在のテクノロジーを使えばそこに着くまでに約6300年かかる。これほど長い宇宙旅行には何世代分もの時間を要し、乗組員のほとんどは一生涯、地球を見ることも、目的地である惑星を目にすることもない。乗組員らは旅の期間中、健康な人間が確実にプロキシマ・ケンタウリへ降り立つことのできる方法で生殖を繰り返さなければならない。
ここで興味深い疑問が持ち上がる。これほどの長い期間にわたって遺伝的に健全な人口を維持するのには、最低限何人の乗組員が必要なのだろうか。
その答えを導き出した専門家がフランスにいる。ストラスブール大学のフレデリク・マハン博士と、リサーチ会社のカスケード(Casc4de)のカミーユ・ベルフィだ。両氏は、乗組員数を様々に変えて、ミッションの生存確率と成功に必要な生殖ルールを計算した。
まず背景から説明しよう。宇宙科学者やエンジニアはこれまでも、近くの恒星まで到達する様々な方法を研究してきた。当然ながら、問題は気の遠くなるような距離を移動しなければならないことだ。それに比べて、人間の作った宇宙船は速度が遅すぎる。
アポロ11号は時速約4万キロだったが、これではプロキシマ・ケンタウリに到達するのに10万年以上かかってしまう。だがそれ以来、宇宙船の速度はだいぶ増している。今年に打ち上げ予定のパーカー・ソーラー・プローブ(Parker Solar Probe)は、時速70万キロを上回る速度で宇宙空間を航行する。これは光の速さの約0.067%だ。
マハン博士とベルフィは、この数値を現在の最先端宇宙テクノロジーが達成可能な速度として採用した。「この速さでも、地球からプロキシマ・ケンタウリの惑星であるプロキシマ・ケンタウリbまでの恒星間航行に約6300年かかります」
これほどの多世代宇宙旅行を実現するには、乗組員を選ぶのもたやすいことではない。重要なパラメーターとして、最初に宇宙船に乗り込む男性と女性の数、年齢、平均余命、不妊症の確 …
- 人気の記事ランキング
-
- This startup is about to conduct the biggest real-world test of aluminum as a zero-carbon fuel アルミ缶をクリーン燃料に、 米スタートアップが作った 「新エンジン」を訪ねた
- Promotion MITTR Emerging Technology Nite #35 Soraの問題点とは? AI時代の知財を考える11/12緊急イベント
- What a massive thermal battery means for energy storage 1000℃のレンガで熱貯蔵、世界最大の蓄熱電池が稼働
- I tried OpenAI’s new Atlas browser but I still don’t know what it’s for 誰のためのブラウザー? オープンAI「Atlas」が残念な理由
- An AI adoption riddle AIの試験運用は失敗続き、それでもなぜ投資をやめないのか?
