AIは送電網の救世主か破壊者か——急増する電力需要と効率化への期待
AIの人気が高まるにつれて、大規模データセンターのエネルギー需要が急増しており、電力料金が高騰している地域も存在する。一方、需要予測などに使うことで、AIは送電網全体に正味でプラスの効果をもたらすとの主張もある。 by Casey Crownhart2025.09.12
- この記事の3つのポイント
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- データセンターの電力消費が2020年から2025年で80%増加し電気料金上昇を招いている
- AI技術は送電網の需給予測や系統連系研究の高速化など運用効率化に活用されている
- AI負荷増大によるインフラ拡張コストがAI技術の効率化効果を上回る可能性が指摘される
人工知能(AI)の人気の高まりは、電力需要の大幅な増加を促進しており、送電網を再構築する可能性を秘めている。データセンターによるエネルギー消費は2020年から2025年にかけて80%増加し、今後も成長を続ける可能性が高い。電気料金はすでに上昇しており、特にデータセンターが最も集中している地域でその傾向が顕著だ。
しかし、とりわけ大手テック企業の関係者の多くは、AIは全体的に見れば送電網にとって前向きな力になると主張している。そうした人々は、AIがより多くのクリーンエネルギーをより迅速にオンライン化し、電力システムをより効率的に運用し、停電を引き起こす障害を予測・防止するのに役立つ可能性があると主張している。
電力会社が供給と需要の予測に使用しているAIツールなど、AIがすでに役立っている初期の事例がある。問題は、これらの大きな期待が、AIが地域の送電網やコミュニティに与える負の影響を上回るほど迅速に現実のものとなるかどうかである。
微妙なバランス
AIがすでに送電網に使用されている分野の1つは予測であると、非営利団体「気候変動AI(Climate Change AI)」のメンバーであるウトカルシャ・アグワンは述べる。
送電網の運用はバランス調整である。運用者は電力需要がどの程度あるかを理解し、それを満たすために適切な発電所の組み合わせを稼働させなければならない。その過程で経済性を最適化し、システム全体の価格を最も低く保つ電源を選択する。
そのため、数時間先、場合によっては数日先を見通すことが必要になる。運用者は過去のデータ(祝日はしばしば需要が高くなる)や天候(暑い日はより多くのエアコンが電力を消費する)などの要因を考慮する。これらの予測では、太陽光パネルなどの間欠的な電源からどの程度の供給が期待されるかも考慮される。
予測にAIツールを使用することにはほとんどリスクがない。AIツールは、数秒さらには数ミリ秒以内の反応を必要とする他のアプリケーションほど時間的制約が厳しくないことが多い。送電網運用者は予測を使用して、どの発電所を稼働させる必要があるかを決定する場合がある。独自の予測を実行し、AIツールを使用して発電所の人員配置方法を決定することもある。これらのツールは物理的に何かを制御することはできない。むしろ、より従来的な手法と併用して、より多くのデータを提供できる。
現在、送電網運用者は送電網をモデル化するために多くの近似をしている。システムが非常に複雑で、あらゆる場所であらゆる時間に何が起こっているかを正確に知ることは不可能であるからだ。考慮すべき発電所と消費者の全体があるだけでなく、送電線が過負荷にならないようにするなどの考慮事 …
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