KADOKAWA Technology Review
×
カバーストーリー 無料会員限定
How Much Damage Could Scott Pruitt Really Do at EPA?

トランプ政権は
厳然たる気候変動の事実も
無視するのか?

トランプ政権は、気候変動を認めない立場の人物を環境保護庁の新長官に指名し、気候変動対策の国際枠組みから離脱する動きを見せている。しかし、政策転換は容易ではなく、長期の訴訟が予想される。 by James Temple2017.02.09

米上院は、今週中にも環境保護庁(EPA)長官にスコット・プルイットオクラホマ州司法長官の就任を承認すると見られている。議会が承認すれば、プルイットはかつて自らが10回以上起訴し、新しい上司であるドナルド・トランプ大統領が廃止すると明言した政府機関を率いる役職に就く。

これまでの発言やリークされた内部文書から、プルイットとトランプ政権はEPAの権限を縮小し、人員を削減、温室効果ガス削減に向けた政策を鈍化させるはずだ。スタンフォード大学ウッズ環境研究所のクリス・フィールド所長は「プルイットがどのような政策を実施するのか、はっきりとはわかりません。しかし、プルイットが気候変動の科学を信じず、短期的な利益を求めて化石燃料の使用を推進してきた人物であることは、これまでの言動から見て間違いないでしょう」という。

プルイットは、クリーン・パワー・プランや自動車の低燃費基準など、オバマ政権が制定した環境基準を狙い撃ちにするだろう。気候変動対策の転換点となったパリ環境協定で定められた温室効果ガス削減目標の達成は米国にとって既に厳しい状況だが、EPAが環境基準を覆せば、目標達成はさらに困難になる。

しかし大論争なしに、政策は変更できないだろう。熾烈な法廷闘争を乗り越え、確固たる科学的事実に基づいて制定された環境規制の大半を緩和するには、パブリック・レビューの長期化は必至だ。また、規制緩和が法廷に持ち込まれて争われるのもほぼ確実だろう。

オクラホマ州司法長官として、プルイットは、他の州とともにクリーン・パワー・プランを巡ってEPAを相手に訴訟を起こした。クリーン・パワー・プランはオバマ大統領のもとで制定された二酸化炭素排出規制で、発電所の二酸化炭素排出量を2030年までに32%削 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The three big unanswered questions about Sora 時間も資金も溶かす? AI動画SNS「Sora」3つの疑問
  2. EV tax credits are dead in the US. Now what? 米EV減税が正式廃止、今後の動きをドイツの先例から予想
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
気候テック企業10 2025

MITテクノロジーレビューは毎年、気候テック分野で注目すべき企業を選出し、その一覧を発表している。 今回で3回目となる本特集では、なぜこれらの企業を選出したのか、そして米国の政治的変化をどのように考慮したのかについても詳しく解説している。併せてお読みいただきたい。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る