
核融合研究の途絶えた夢、完成当日にお蔵入りの過去
2022年12月、ローレンス・リバモア国立研究所は核融合実験で初めてエネルギー純増を達成した。しかし、同研究所には10年近くの歳月と10億ドルをかけて構築した核融合施設が、一度も稼働させることなくお蔵入りになった歴史がある。 by Jon Keegan2024.01.18
1986年2月21日金曜日、300人の科学者と技術者たちが、ローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory:LLNL)で開催された落成式に集まった。最終試験の後、ミラー核融合試験施設-B(Mirror Fusion Test Facility-B:MFTF-B)の完成が祝われ、ロナルド・レーガン政権のジョン・ヘリントン・エネルギー長官からプログラム・ディレクターのT・ケネス・ファウラーに、素晴らしい仕事をしてくれたという祝福の手紙が贈られた。
しかしまさに落成式のその日、10年近くの開発期間と10億ドル近い資金(2023年時の換算)が費やされたプロジェクトは中止され、この巨大な装置は一度も起動されなかった。
「この素晴らしい新しい施設を完成させた矢先、予算の逼迫により施設を待機状態にしなければならず、皆さんが期待していたように稼働させられないという事実を、私がどれだけ残念に思っているかを皆さんに知っていただきたいのです」とヘリントン長官はファウラーへの手紙で書いている。 「これは非常にもどかし …
- 人気の記事ランキング
-
- How AI and Wikipedia have sent vulnerable languages into a doom spiral AI翻訳のゴミに汚染された ウィキペディア、 マイナー言語にとどめ
- The three big unanswered questions about Sora 時間も資金も溶かす? AI動画SNS「Sora」3つの疑問
- Inside the most dangerous asteroid hunt ever 史上最も危険な小惑星 「2024 YR4」追った 科学者たちの60日間
- EV tax credits are dead in the US. Now what? 米EV減税が正式廃止、今後の動きをドイツの先例から予想